これまでに、食塩との組み合わせでうま味の増強効果を起こす物質が、だしの揮発性の成分であることを明らかにしてきた。本研究では、だしの揮発性成分と食塩とのうま味増強効果に関わる神経基盤を明らかにすることと、うま味認知に関わる物質を特定することを目的としている。だし中の成分として、揮発性成分とイノシン酸、蒸留水の3つを設定し、食塩濃度を調整したものを試料として用いた。官能評価の結果、うま味の強度は、だし中の成分と塩分濃度との間に交互作用が認められ、食塩6 g/Lを添加しただし揮発性成分水溶液が最大となった。脳の賦活化部位測定の解析の結果、食塩6 g/Lを添加しただし揮発性成分水溶液では、背外側前頭前野と眼窩前頭皮質、前頭極が活性を示したが、食塩0 g/Lのだし揮発性成分水溶液では活性しなかった。また、食塩6 g/Lを添加したイノシン酸溶液では、背外側前頭前野と眼窩前頭皮質、上側頭回、前頭極が活性を示し、食塩0 g/Lのイノシン酸水溶液でも背外側前頭前野、上側頭回、前頭極が活性を示した。平成30年度は、脳の賦活化部位について、ベイジアンネットワーク分析により(統計ソフトR2.15.1)、脳内の伝達経路を解析した。 ベイジアンネットワーク分析の結果、揮発性成分水溶液は、食塩の影響を受け、背外側前頭皮質と上側頭回、眼窩前頭皮質に収束した。イノシン酸水溶液は、食塩の影響を受けず、味として脳に情報が伝わり、二次味覚野である眼窩前頭皮質に収束した。
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