本年度は初年度の研究課題であった北海道教育大学札幌校「臨時言語障害児教育教員養成課程」の追調査および2年次終了時の研究課題として残された「北海道言語障害研究会」の実態に関する分析を進めるとともに、最終年度として研究の総括作業を行った。 その結果、北海道教育大学札幌校「臨時言語障害児教育教員養成課程」修了生の動向として「ことばの教室」担当者へ就任していく事例が複数確認でき、「ことばの教室」発展における同課程の役割の大きさがうかがわれることを明らかにした。 また北海道言語障害研究会は狭義の言語障害児の支援に特化した組織ではなく、各障害に付随する言語障害に関する支援を学校教育や、福祉、保健、医療等の各領域の専門職や保護者を交えて検討する組織であることを明らかにした。このことは研究会等が学習の場や情報交換の場となるとともに、それらの活動を通して各領域の専門職等が多職種連携を通して連携・協働を図るコミュニティを形成していたと考えられることを指摘した。この点は障害児・者支援に関する対策を推進する社会運動体としての機能を有することも構想されていたことからもうかがえる。そして実際には札幌市教育政策下での事業展開に関して、真駒内養護学校言語治療教室の「仮開級」における対象児の選定を通して、組織を構成する専門職の専門性を生かして、北海道での言語治療教室設置推進等、言語障害児支援に関する体制整備に大きく寄与していたのである。 上記の研究成果及び初年次、2年次の研究結果を総合すると、北海道における「ことばの教室」の展開過程において、「臨時言語障害児教育教員養成課程」および「北海道言語障害研究会」「北海道言語障害児教育研究協議会」の2つの研究会が担当者の養成や専門性向上に大きな役割を果たしていたことを明らかにした。
|