研究実績の概要 |
大気汚染物質のアレルギー増悪作用に寄与する多環芳香族化合物の探索とその機構解明を目指してきたが、特に抗原との共曝露に注目し、ヒト肺胞上皮(A549)細胞を用いてIL-8産生を強く誘導する化合物のスクリーニングを実施し、安定な検出条件で改めて多種の多環芳香族化合物に対し、ダニ抗原との48時間共曝露におけるIL-8産生への影響を調べた。代表的な4、5環のPAHs(benzo[a]pyreneなど)7種類、含酸素PAHs(oxy-PAHs)の中でもキノン類、ケトン類に加え酸無水物、アルデヒド化合物、カルボン酸(計19種類)、またニトロPAHs(nitro-PAHs)8種に注目したが、再現良く抗原単独より有意差が認められたのは9,10-phenanthrenequinone、5,12-naphthacenequinoneにおける増加、benzopyrenoneにおける減少であった。また3-nitrobenzanthroneで有意に顕著な増加が新たに認められ、これらの物質から活性酸素種との関連が予想された。また5,12-naphthacenequinoneとの抗原同時曝露24時間後で、IL-8のRNAが抗原単独よりも増大する傾向が認められ、さらに最適曝露時間やタンパク質誘導との関連を調べる必要がある。血球細胞(Foxp3を組み込んだTreg細胞様Jurkat細胞)に対しても化合物曝露影響を検討してきたがアッセイ系の安定性も含め途上となった。in vitro系での活性物質に対するin vivo評価は未実施となったが、上皮系細胞において複数の多環芳香族化合物がアレルギー応答活性を増加させることをIL-8のタンパク質、RNAレベルで認めているため、その作用機構について阻害剤による効果、また血球細胞を使った知見を蓄積し、活性化合物の探索および各化合物の活性プロファイルを明らかにしていきたい。
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