研究課題
本研究は、B細胞性リンパ腫(B-cell lymphomas; BCL)における初回治療抵抗性の高悪性度症例群を細胞遺伝学的手法にて検知とすることを目的とし、染色体9p21の微小領域に位置しており悪性リンパ腫の重要な予後予測因子であるCDKN2A遺伝子の欠失を検出可能とする新規のFISH法の開発を目指したものである。方法は、蛍光色素FITCでラベルされた微小領域検出用DNAプローブを作成し、第一段階として通常のFISH法として標本とハイブリダイズさせた後、第二段階として蛍光色素(Alexa488)付き抗FITC抗体を反応させ、DNAプローブの蛍光シグナルを増幅させる(増幅FISH法)。平成28年度は、CDKN2A遺伝子領域のみで構成されたゲノムDNAをプローブとして用いて増幅FISH法を行い、分裂期の染色体で安定したシグナルを得ることが可能となった。すなわち、正常細胞を用いた場合、シグナルをほぼ100%検出することに成功した。一方で9p21欠失を認める腫瘍細胞において偽陽性シグナルは検出されなかった。また、ゲノムアレイ法にてCDKN2Aの欠損が確認済みである複数の細胞株を用いて、市販プローブによる通常FISH法と、今回新規に開発した増幅FISH法を比較した結果、通常FISH法ではシグナル陽性となり、微小欠失陰性と判定された細胞株は、増幅FISH法ではシグナルは検出されず、微小欠失陽性と判定できた。以上の結果より、増幅FISH法は、通常FISH法では偽陽性となる染色体微小欠失を正確に判定できる新規の検査法であることが確認できた。
2: おおむね順調に進展している
現在、目標としていた増幅FISH法の基礎的手法の確立が完了し、多数の症例を解析することが可能となったため
今後、当研究室で保存された保存検体を用いて症例解析を行い、増幅FISH法によるCDKN2A欠失の検出についての臨床的な意義について検証する。
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International Journal of Hematology
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British Journal of Haematology
巻: 178 ページ: 534~546
10.1111/bjh.14707