研究課題/領域番号 |
16K21288
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
知久 昌信 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20582399)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アルミニウム二次電池 / フッ化銅 / 塩化銅 |
研究実績の概要 |
負極にアルミニウムを用いるアルミニウム二次電池を実現するために、新規な正極材料の開発が不可欠である。三価のカチオンになるアルミニウムはリチウムイオン二次電池などで使用されるコバルト酸リチウムなどのインサーション型の正極材料と静電的に強く結合することから、正極内部の拡散が阻害され出力密度が低いことが予想されるが、コンバージョン反応を利用した正極であればこのような問題は生じない。申請者はこれまでにフッ化銅と塩化銅がコンバージョン正極として高い性能を示すことを発見した。初年度ではフッ化銅がどのようなメカニズムで充放電しているかを知るために、充放電後の電極の粉末X線回折による分析を行った。電極作製直後、放電後、充電後の電極を分析したところ、フッ化銅正極は充放電を繰り返すことで塩化銅に変化していることが分かった。申請者らはアルミニウム二次電池用の電解液に塩化アルミニウムとジプロピルスルホン、トルエンの混合液を使用している。この電解液には塩化物イオンが含まれているために、コンバージョン反応において、充電により正極が金属銅から銅イオンに変化すると電解液中の塩化物イオンと結合し塩化銅が生成することが推測される。一方で、塩化銅を用いた正極は初期放電容量が理論容量に近い値を示すが、サイクル特性が悪く2サイクル目以降は理論容量の20%以下まで低下してしまう。申請者は充電時のカットオフ電圧の向上(4 V)や塩化銅の微細化によりサイクル特性を改善することが可能であることを発見した。これらの知見はアルミニウム二次電池用正極材料として初めての発見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画として、フッ化銅と塩化銅を用いたアルミニウム二次電池用正極材料の充放電メカニズムを研究した。ポリイミドを結着材として導電助剤にケッチェンブラックを用いて作成した正極の状態を知るために粉末X線回折を用いて充放電後の正極材料を分析した。その結果、初期放電によりフッ化銅は金属の銅に還元されていた。一方でこの放電後の電池を充電したところ、フッ化銅には戻らずに塩化銅が生成していることが判明した。これはアルミニウム二次電池用の電解液に塩化アルミニウムとジプロピルスルホン、トルエンの混合液を使用している。この電解液には塩化物イオンが含まれているために、コンバージョン反応において、充電により正極が金属銅から銅イオンに変化すると電解液中の塩化物イオンと結合し塩化銅が生成することが推測される。この発見はフッ化銅電極の充放電メカニズムの推測に非常に重要であり、フッ化銅から塩化銅へのコンバージョンを踏まえてより高性能なコンバージョン正極の開発を行う。 また、塩化銅を用いたコンバージョン正極では充電時のカットオフ電圧の変更や塩化銅の微細化によりサイクル特性を改善することが可能であることを発見した。これは塩化銅を用いた正極の長寿命化に貢献する成果である。加えて、充電電圧を非常に高く(4 V)まで上昇させる必要があったことから、塩化銅正極を用いたアルミニウム二次電池のサイクル特性が悪い理由として、コンバージョン反応により生じる塩化アルミニウムが電解液中に溶解していることが考えられる。このようなメカニズムの解明はサイクル特性の向上に大きく資すると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
フッ化銅正極を用いたアルミニウム二次電池用正極の解析により、電解液中の塩化物イオンがコンバージョン反応に関わっており、フッ化物から塩化物へ変化することでサイクル劣化が生じていることが推測される。そこで塩化物イオンを含まない電解液の開発が必要である。塩化アルミニウムは容易に入手可能であり、溶解性が高いことからアルミニウム塩として広く利用されるが、塩化物イオンとは異なるアニオンを持つアルミニウム塩は溶解性や反応性が低い酸化物か反応性が非常に高く安全に取り扱うのが困難な有機アルミニウム塩しか市販されていない。そこでアニオン交換により様々なアルミニウム塩を作製し、アルミニウム二次電池用電解液として利用できないか探索を行う。アニオンとして様々な候補が考えられるが、リチウムイオン二次電池用電解液で用いられるトリフルオロメタンスルホニルイミドなどを対象にする。 また、塩化銅を用いた正極においてサイクル特性を向上するために非常に高い電圧(4V)まで充電する必要があった。このような高い電圧を必要とする理由の一つにコンバージョン反応により生成する塩化アルミニウムが電解液中に溶解してしまうことが挙げられる。この点を考慮しても、塩化物イオンを含まない電解液がコンバージョン正極の性能向上に不可欠であることが考えられる。 また、塩化物以外のアニオンを含む遷移金属化合物を用いたコンバージョン反応により充放電する正極材料の開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通り予算を執行したきたが、端数として4,152円余ったため次年度へ繰り越しを行った。執行した金額は予定の99.8%であり、端数を無くすために余分な出費をする必要はないと判断したことから4,152円を繰り越している。この金額を次年度へ繰り越したとしても、次年度予算は1%以下の変化しかないため影響はないと言える。
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次年度使用額の使用計画 |
アルミニウム二次電池に不可欠な消耗品を購入する。
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