高エネルギー密度と高い出力密度を両立するアルミニウム二次電池を実現するために、コンバージョン型の反応を用いた正極材料の開発を行っている。コンバージョン型の正極材料は高いエネルギー密度と出力密度を持つが一般的に充放電の繰り返しによる劣化が非常に早く進行する。アルミニウム二次電池においても、ハロゲン化銅を用いたコンバージョン型の正極材料は理論値とほぼ同じ初期放電容量を示すのに対して、充放電サイクルにより急速に劣化が生じる。これまでに申請者らは酸化鉄がアルミニウム二次電池用のコンバージョン型の正極材料として利用可能であることを見出しているが、放電容量が理論容量の1/10程度である、という問題点があった。今年度、グラフェンなどの炭素材料と複合化した酸化鉄を用いることで、理論容量の1/2まで放電容量を大きくすることに成功した。この放電容量は鉄の酸化還元によるファラデー電流と表面積の大きいグラフェンによる二重層容量を足し合わせたものであり、純粋にコンバージョン型の正極とは言えないが、この組み合わせにより大容量を示す正極材料はあらたな多価カチオン二次電池用正極材料の指針であると言える。また、コンバージョン反応を用いる正極材料ではフッ化銅と酸化鉄は充放電サイクルによる劣化が少なかったことから、遷移金属とフッ素、酸素の組み合わせはアルミニウム二次電池用コンバージョン型正極材料の候補として有力であることが見出された。
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