研究課題/領域番号 |
16K21289
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
西野 有里 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 助教 (20342826)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ニコチン性アセチルコリン受容体 / 分子内運動計測 / チャネル開閉 |
研究実績の概要 |
細胞内で目的タンパク質に融合して発現させた金属結合ペプチドタグ上に形成される微結晶を用いて、DXTを利用した目的タンパク質の分子内運動計測を行うためには、細胞毒性を生じない濃度で金属イオンを培養液に添加する必要がある。現在までにDXTで実績のある金の微結晶を形成させるため、各種金塩を大腸菌培養液に添加し、様々な濃度と時間における大腸菌の増殖や形態について評価を行って、分子内運動計測に適した金塩の種類、添加濃度と時間を決定した。また、細胞内で形成された微結晶を効率良く確認するために、クライオ走査型電子顕微鏡を用いた観察法を確立した。 金属結合ペプチドタグ融合alpha7型nAChRの単粒子解析に向けては、タグの融合部位、発現条件、可溶化条件、精製法について検討を行った。その結果、N末端に金属結合ペプチドタグ、C末端にFLAGタグを融合したalpha7型nAChRを大腸菌で発現させることができ、FLAGタグに対するアフィニティーカラムを用いて高純度に精製することに成功した。 nAChRの細胞外領域部分の分子内運動を計測する場合には、金属結合ペプチドタグ上で形成させた金属微結晶の回折を利用する方法以外に、あらかじめ作製した金属微結晶に抗体を結合させてそれを培養液に添加することによって、細胞外に露出した部分を金属微結晶で標識し、その回折点を利用する方法がある。そこで、抗nAChR抗体Fab’フラグメントと金属微結晶を結合させる方法について検討を行った。培養細胞細胞膜に発現しているnAChRを、抗nAChR抗体Fab’フラグメントを結合させた金属微結晶で特異的に標識できることを、光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用いた相関観察を行って確認した。なお、神経型と筋肉型nAChRでリガンド依存的な分子内運動の違いを調べるために、抗nAChR抗体は、神経型と筋肉型に共通に結合する抗体を用いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単粒子解析を行うためにはタンパク質を高純度に精製する必要があるが、大腸菌を用いて発現させた金属結合ペプチドタグ融合alpha7型nAChRを高純度に精製することができた。また、哺乳類培養細胞表面で発現しているnAChRを、抗nAChR抗体Fab’フラグメントが結合した金属微結晶を用いることによって特異的に標識できたことから、この培養細胞を用いて分子内運動計測を行う準備が整った。これらのことから、おおむね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
nAChR細胞外領域のリガンド依存的分子内運動については、カプトン膜上で培養した哺乳類培養細胞の細胞膜で、alpha7型nAChRおよび比較対照として筋肉型nAChRを発現させ、抗nAChR抗体Fab’フラグメントを結合させた金属微結晶でnAChRの細胞外領域を標識し、種々のアゴニストおよびアンタゴニストを添加したときのnAChRの分子内運動をDXT法を利用して計測する。当初はアフリカツメガエル卵母細胞を用いる予定であったが、哺乳類培養細胞でもnAChRの発現、金属微結晶標識、分子内運動計測を行うことができる目処が立ったため、アフリカツメガエルの卵母細胞より生体に近い哺乳類培養細胞を用いることにした。 nAChR細胞内領域のリガンド依存的分子内運動については、細胞内領域に金属結合ペプチドタグを融合させたnAChRを大腸菌または哺乳類培養細胞の細胞膜で発現させ、金属結合ペプチドタグ上で形成させた金属微結晶を利用して、DXT計測を検討する。金属結合ペプチドタグ上でDXT計測に適した金属微結晶が形成できなかった場合には、抗nAChR抗体Fab’フラグメントを結合させた金属微結晶をエレクトロポレーション法により細胞内に導入してnAChR細胞内領域にFab’を介して金属微結晶標識を行い、種々のアゴニストおよびアンタゴニストを添加したときの分子内運動計測を行う。 また、精製した金属結合ペプチドタグ融合nAChRに金属塩を添加することによってタグ部分に金属イオンを結合させ、アゴニストまたはアンタゴニスト存在下、透過型電子顕微鏡で画像を取得し、単粒子解析を行ってアゴニストまたはアンタゴニスト存在時の金属結合ペプチドタグの分子内位置を解析する。抗体Fab’フラグメントを用いて金属微結晶標識したnAChRについても、同様に分子内の金属微結晶の位置を解析し、チャネル開閉時の構造変化を動的に議論する。
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