研究課題/領域番号 |
16K21290
|
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
荒木 望 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (10453151)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 定常状態視覚誘発電位 / 事象関連脱同期 / ハイブリッドBMI / リハビリテーション / VR装置 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,脳波を用いて運動麻痺患者の運動意図に応じて動作する新しいリハビリテーションシステムの開発を最終目標としており,(1)これまでの研究で行ってきた運動時の脳波に現れる特徴量を用いた動作判別に加え,視覚刺激によって脳波に発生する特徴量など,動作判別に用いるものとは異なる特徴量を同時に利用するハイブリッド型ブレインマシンインタフェース手法を確立し,脳波により複数動作を弁別することや動作判別と同時に機器の制御を使用者自身が行える手法を提案する,(2)リハビリテーション装置の制御において,使用者の予期せぬ動きに対しても無理な力を発生しない安全な制御手法の適用検討およびその制御手法の確立,の2つについて主に取り組んでいる. 平成29年度は(1)のハイブリッド型ブレインマシンインタフェース手法の検討として,運動と視覚刺激による特徴量の同時測定評価実験を試みるとともに,視覚刺激をヘッドマウントディスプレイやモニタを用いて左右独立に与えることによることでパターン識別数を増やす手法について検討を行った.これについては,刺激の与え方により脳の左右で異なる脳波が観測されることを確認した.また,(2)のリハビリテーション装置については,昨年度に引き続き受動速度場制御を用いた制御則の見直しに加え,ヘッドマウントディスプレイ型のVR装置を用いることで使用者に仮想空間上の体を提示し,この仮想空間上の体を動かすことでリハビリテーションを行うシステムについて新たに検討を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視覚刺激による定常状態視覚誘発電位と運動企図により発生する事象関連脱同期を用いたハイブリッド型BMI手法に関しては,視覚刺激の周波数を変化させると事象関連脱同期の発現率が変化する可能性があることが実験の中で分かった.この結果に基づいて視覚刺激を行う周波数帯域を決定し,視覚刺激による方向選択メニューと事象関連脱同期による動作/停止の制御を行う新しいインタフェースを試作した.現在,このインタフェースを健常者の脳波を用いてリアルタイムで操作する実験を行っているところであり,この部分に関しては概ね予定通りに遂行している. また,リハビリテーション装置については,足漕ぎ装置への受動速度場制御の適用を行い,安全に停止できることを確認できたことから一定の目処がついたと考える.しかしながら,当初予定していた外骨格型下肢駆動装置については,安全性等の問題から今回の課題内での試作が難しいと考えている. 一方で,当初予定していなかったヘッドマウントディスプレイ型のVR装置を用いた新たな視覚刺激手法についての検討や,仮想空間上で作成した体を実際の使用者の体の動きに同期させて提示し,この仮想の体を動かすことでリハビリテーションを行う新たな手法についての検討を今年度行った.本手法がリハビリテーションに応用できれば,実際の体には負荷を与えることなくリハビリテーションを行うことが可能となるため,今後も足漕ぎ型リハビリテーション装置と並行して検討を進めていく.
|
今後の研究の推進方策 |
視覚刺激による定常状態視覚誘発電位と運動企図により発生する事象関連脱同期を用いたハイブリッド型BMI手法に関しては,試作したインタフェースの健常者による予備実験の結果,事象関連脱同期の検出が単一の特徴量を用いたインタフェースと比較して困難となることが明らかとなった.これについては運動と視覚刺激という2つのタスクを同時に行っていることから強度が低下したものと考えられるため,従来行っていなかった事象関連脱同期の信号強度に関するフィードバック(視覚的に信号強度を提示)などを行うことで識別率の改善を図り,手法の確立を目指す. また,進捗状況でも述べたヘッドマウントディスプレイ型のVR装置を用いた手法については,(1)左右視野を独立に刺激することで分類パターン数を増やす手法,および(2)仮想空間上で作成した体を実際の使用者の体の動きに同期させて提示し,この仮想の体を動かすことでリハビリテーションを行う新たな手法,の2点について検討を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に購入を計画していた脳波測定用アクティブ電極システム一式を共同研究先から借用することができたため,当初予定していた購入を見合わせた.一方,今年度は本研究課題の中で新たに検討を行ったヘッドマウントディスプレイを用いたシステムを構築するために必要な物品およびソフトウェアの購入するとともに,当初購入を予定していたものと比較して安価なアクティブ電極システム一式を購入したため,前年度と比べて繰越金額は減少した.
(使用計画) 次年度はヘッドマウントディスプレイを用いた装置に必要となる体の動きを計測するセンサシステム,およびリハビリテーション装置の駆動に必要となるアクチュエータ類一式を購入する予定である.
|