研究実績の概要 |
本年度は昨年までに施行した免疫組織学的検討に追加し、術後経過が5年を超えた2013年度の50例の肝細胞癌手術検体を用いてさらに免疫組織学的検討を行った。1次抗体はこれまで同様abcam社のAnti-KDM1/LSD1 antibody-ChIP grade (rabbit polyclonal, Cat#ab17721) を使用した。染色強度と割合のscoringに関してもこれまで同様に決定し、当科で作成している肝細胞癌databaseと突合し、肝細胞癌におけるLSD1の関与を臨床的に検討した。LSD1の高発現群では、5年全生存率・無再発生存率両者において、低発現群と比較して著明に予後不良であった。さらに多変量解析において、LSD1高発現は5年全生存率・無再発生存率において独立した予後不良因子であった。これらの結果より、肝細胞癌におけるLSD1の臨床的寄与を証明することができた。LSD1はこれまでの検討より、細胞周期におけるG1-S期の移行に関与し、クロマチン構造の変化(Open/Close)に影響していることが判明している。今後LSD1阻害剤(例:SP2509(Cayman Chemical company)など)を用いて、より臨床実装に近い機能解析を進めていく予定である。具体的には肝細胞癌細胞株やマウスを用いた肝細胞癌モデルを構築し、LSD1阻害剤の抗腫瘍効果を確認していく。またこれらの結果については、学会発表および論文発表として公表し、世に知らしめていく予定である。
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