本研究の2年目は、サステナビリティ報告における経営トップのメッセージを対象に、テキストマインニングを用いて経営トップのサステナピリティ経営に対する意図の分析を行った。そのために、本研究では、言葉による正統化の違いをCastell and Lozano (2011) による戦略的、制度的、弁証法的の3つCSRレトリックを採用した。 第1に、制度がどのようにCSRレトリックに影響しているのかを分析するために、環境・社会課題への政策やイニシアティプに関連する年度を制度の代理指標と捉えて、CSRレトリックの経時分析を行った。分析結果は、サステナビリティ経営が普及した後半に、弁証法的CSRレトリックの傾向が見られた。このことから具体的な環境・CSR課題がサステナビリティ経営後半に見られることが示唆された。 第2に、環境/社会パフォーマンスとCSRレトリックの関係を分析した。その結果、「環境パフォーマンス」および「社会パフォーマンス」の良い企業は、「弁証法的CSRレトリック」を使用する傾向が見られた。他方で、「環境パフォーマンス」および「社会パフォーマンス」の悪い企業は、「戦略的CSRレトリック」や「制度的CSRレトリック」の使用傾向は見られたが、「弁証法的CSRレトリック」の使用傾向は示されなかった。これらの結果から、環境/社会パフォーマンスの良し悪しの違いによる正統化の違いが示唆された。 第3に、CSRレトリックに影響する経営トップの属性として、「経営トップの在職期間の長短」や、「国連グローバル・コンパクト署名の有無」を取り上げて検証した。その結果、「在職期間の短い」経営トップが認知的正統性の意図をもつ制度的CSRレトリックを使用する傾向と、「国連グローバル・コンパクト署名経営トップ」が道徳的正統性の意図をもつ弁証法的CSRレトリックを使用する傾向が示された。
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