研究課題/領域番号 |
16K21294
|
研究機関 | 公立鳥取環境大学 |
研究代表者 |
角野 貴信 公立鳥取環境大学, 環境学部, 准教授 (50511234)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 土壌炭素動態モデル |
研究実績の概要 |
本研究は,現場条件で植物体が分解を受けて土壌水中に溶解して土壌コア内を浸透し,無機化または吸着するまでの過程を実験室内で追跡し,現場の土壌環境(温度・水分)の変化と組み合わせたデータを得ることが目的である。平成28年度は,土壌カラム実験によって土壌水の浸透過程と熱拡散過程のモデル化を行った。褐色森林土壌の100mLコアを採取し,降雨強度を変えて雨滴を浸透させ,浸透水中に含まれる陽イオン濃度を測定した。その結果,降雨強度を2~6mL/min(6~18mm/hに相当)と変化させるにつれ,Na,Ca,K,Mgのいずれの陽イオン濃度とも減少する傾向を示した。次に,土壌にイオンを添加した場合の,土壌中の浸透速度に与える影響を調べた。その結果,硝酸イオンの添加効果は,6日目以降徐々に減少し,29日目には効果がほとんど計測できないことが明らかになり,これは土壌中へのイオン吸着によるものと推察された。これらの結果は,13C植物を添加し,浸透水中の溶存炭素を調べる本研究の開始に大きく影響を与え,実験条件を再度検討する必要性が明らかになった。 一方,上記の研究によって得られたデータを,既存のモデルを用いて検討した結果,土壌水分に関しては非平衡状態での土壌吸着を伴う移流―拡散モデルとすれば利用可能であることが明らかとなり,この点は大きな進展であった。土壌温度においては,これまでの研究から,現場において接触条件での熱拡散モデルが利用できることが分かっているため,本研究においても同様の仮定が可能であると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では,平成28年度中に高13C植物体の作成が終了し,現場から採取した土壌コアに投入して土壌水および土壌空気を採取開始することになっていたが,高13C植物体作成のためのグロースチャンバーが年度前半にほとんど利用できなかったこともあり,高13C植物体の作成の開始が当初の予定より遅くなった。また,土壌温度および水分計測データロガー,水分制御システムの構築は,スペックに対応する機器の選定に予想以上の時間がかかったため,年度内の納入が難しく,執行を断念した。これらの理由により,植物体の作成とモニタリングの開始がやや遅れている。一方,土壌コア内の土壌水浸透過程や熱拡散過程,土壌炭素分解・蓄積過程全体のモデル化は順調に進展しており,「理論」の点で,当初の予定よりやや進捗しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度が最終年度であり,やや遅れている高13C植物体を完成させて実測を速やかに開始し,実験室内での土壌コアの温度・水分制御システムの構築、高13C植物体の作成と土壌への投入、土壌水および土壌空気の経時的採取と、13C濃度の測定を行う。また,実験終了後にコアを解体して分画し、固相に吸着した13C濃度を計測する。それまでに得られたデータをまとめ、反応動力学的解析を行い、各土壌コア内で生起した土壌炭素分解・蓄積過程全体のモデル化を行うことにより,「理論」に「実測」を速やかに同化させ,本研究の速やかな完成を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
高13C植物体作成のためのグロースチャンバーが年度前半にほとんど利用できなかったこともあり,高13C植物体の作成の開始が当初の予定より遅くなった。また,土壌温度および水分計測データロガー,水分制御システムの構築は,スペックに対応する機器の選定に予想以上の時間がかかったため,年度内の納入が難しく,執行を断念した。
|
次年度使用額の使用計画 |
当初の予定通り,通信機能付きデータロガーの速やかな納入に合わせ,高13C植物体のを完成させて実測を速やかに開始する。また,昨年度末に納入されたHPLCやGC-MS用の消耗品や分析機器を,当初の予定通り購入して使用する。国内外の研究会に参加し,情報のアップデートと研究成果の発表を行う。
|