研究課題/領域番号 |
16K21295
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
井上 幸子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (90747528)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 不登校 / 学校適応感 / 支援者 |
研究実績の概要 |
本研究は4年間の計画で実施し、今年度が最終年の予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により年度内に完了することができなかった。4年目の今年度は、当初の計画では、調査研究全体の結果から得られた知見をもとに、子どもの不登校や問題行動の予防と対応、そのなかでも特にメンタルヘルスの健康の維持増進を支援することを目指して支援体制の構築を目標としてきた。子どもの生活満足感の低下と学習に関する不適応感が、不登校などの問題行動に関連しており、教員を対象とした調査結果から質的分析によって学校生活以外の家庭生活や個別の要因が明らかになった。この結果は、学会にて発表したが、昨今の子ども世代における不登校の特徴を明らかにすることは十分にできていないという課題が残っている。また、学校環境以外での家庭や地域生活における要因については、十分に検討できていないので、次の研究に組み込むよう発展させる予定である。 支援者支援においては、子どもの学校不適応感に対する学校現場での支援として、学習的適応感を向上させるための学習支援が考えられるが、教員による個別支援等を導入することは現実的に難しいため、地域で実施可能な学習支援についての検討や、取り組みに対する効果検証を行うことが今後は有用であると考えている。地域で実施可能な支援を増やすことによって、学校への適応感も増加し、不登校の予防や解消にもつながると推察され、この結果を用いて地域での支援体制構築についてさらに考察する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、一部予定していた情報収集が実施できなかったが、研究は概ね順調に進んでいる。小学生年代の不登校要因について、教員を対象に調査しデータを分析した結果を、学会にて発表した。現代の不登校の特徴を分析により十分に明らかにできていなかったため、分析をさらに深め再考察を行う必要がある。次年度に引き続き分析を続ける予定である。また、この調査は、不登校の児童生徒に対して直接実施したインタビューではなく、教員を対象に調査を行ったため、そのことが結果に影響している可能性があり、この点を考慮した考察が必要である。研究全体では、小学生および中学生に対して学校環境適応感尺度を用いて質問紙調査を実施しているが、この調査で明らかにされた不登校の関連要因である生活満足感の低さや学習的適応感の低さに関して、教員への調査では具体的な事柄がデータとして得られた。それぞれ特徴のある2つの調査結果が得られているので、今後は総合的に不登校の関連要因について考察する予定である。支援体制の構築については、労働者等へのメンタルヘルス支援体制を参考にする予定であったが、新型コロナウイルスの影響により十分に情報収集ができなかったため、次年度に引き続き情報収集を行いながら検討する。
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今後の研究の推進方策 |
これまで実施した調査から得られた結果を活用し、不登校の子どもの支援や地域で生活する子どものメンタルヘルスの支援の構築にむけてさらに研究を発展させる。学校環境以外の地域生活において、生活満足感を低下させる、あるいは増加させる要因についての検討や、学校現場以外で可能な支援について考察する。特に家庭や地域生活に関連する生活満足感については、さらに調査を行うことも必要であると考えられるため次の研究について計画し、研究協力者と準備を行なっていく。学習支援については、既に実施されている地域での取り組みについての効果を先行研究などから情報収集し支援策の構築につなげる。 本研究を発展させ、次の研究テーマへ移行する際には、研究目的を不登校の状態にある児童生徒の支援のみとするのではなく、学校だけでなく地域コミュニティに参加することに対して困難を感じている子どもを広く対象とし、状況や特性に応じた具体的な子どものメンタルヘルス支援策を提示できるような研究を計画する。具体的には、外国籍の子どもや性的に多様な子どもが学校に行くことに対してだけでなく、地域コミュニティに参加することに対して抱く不安や苦痛なども明らかにし、地域の資源を活用して子どものメンタルヘルスの維持増進に役立つ支援策を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、予定していた県外出張を伴う情報収集を実施できなかったため次年度使用額が生じた。次年度は、同様の情報収集の実施、あるいは追加で実施可能な調査について調整のうえ使用予定である。
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