研究課題/領域番号 |
16K21296
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
有持 旭 広島市立大学, 芸術学部, 講師 (30759783)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アニメーション / エストニア / シュルレアリスム / 風刺画 / プリート・パルン / 比較美術史 / オーラル・ヒストリー |
研究実績の概要 |
エストニア・アニメーションのシュルレアリスム受容を調査する本研究において、初年度となる平成28年度は、タリン市を中心として文献調査及び作家や学芸員への聞き取り調査を行い、研究資料の収集に務めた。まずオーラル・ヒストリーとして、プリート・パルンを含む3名のアニメーション関係者にパルンの創作活動に関してインタビューを行った。しかし、予定していたその他のインタビューイ2名の諸事情により調査が実現できない事態も生じた。文献調査として、エストニアのアニメーション作家たちが1960年代後半から90年代前半まで様々な印刷媒体に風刺画を描いていた史実に基づき、『Sirp ja Vasar』、『Pikker』、『Noorus』、『Taheke』等を調査した。また、エストニアで行われたAnimated DreamsとPriit Parna Animafilmifestivalという2つのアニメーション映画祭では、アニメーション関係者以外にも観客や映画祭スタッフといった幅広い層に対して、シュルレアリスムの影響に関する認識を調査することができた。これらの結果、これまで不明瞭だったエストニアにおけるアニメーションと風刺画とシュルレアリスムの緊密な関係について、初年度としては十分な確証が得られた。エストニア・アニメーションに関する研究のうち「風刺画」については、「プリート・パルンの風刺画から読み解く〈不条理〉」(第19回日本アニメーション学会大会、2017年6月)として研究を発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の初動として重要であった基礎調査を行うことが出来たため。聞き取り調査では2名に対し実現できなかったが、文献調査において想定していた以上の資料を得ることが出来た。これらは次年度の研究に向けて躍進的なものとなった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度となる平成29年度は、主にパルンの周辺作家を調査対象とする。まず、初年度の調査結果を踏まえ、聞き取り調査を行う対象者リストを一部見直す。その後、文献調査とともに引き続き実地調査を行い各資料を収集し、年度後半から資料を基に検証できる状態にする。特にエストニア・アニメーションにとって重要である三点、(1)風刺画家、(2)前衛芸術グループ、(3)シュルレアリスト・グループ、これらに焦点を絞り調査を行う。例えば『Sirp ja Vasar』に掲載された風刺画に関して言えば、すでに1971年から1983年のものは収集できているので、今後は1984年から1990年頃までのものを収集していきたい。また、実地調査にパリ、クラクフ、プラハを加える。パリは、当初の予定通りシュルレアリスムとアニメーションに関する調査である。クラクフとプラハは、初年度の調査時にパルンが言及した資料を直接収集しに行く必要性が生じたためである。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費に関して計上額と実費の間で少額の差が出た。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の旅費に割り当てる。
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