研究課題/領域番号 |
16K21298
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研究機関 | 香川県立保健医療大学 |
研究代表者 |
松本 裕子 香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 助教 (20633639)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 看護学 / 慢性看護学 / 小児代謝・栄養学 / 発症予防 / 家族 |
研究実績の概要 |
先天代謝異常症の急性発作(急性増悪)の状況や予防行動に関する国内外の文献は少なかった。そこで、先天代謝異常症と診断された家族の療育状況について文献検討を行った。その結果、患児の親は、稀少疾患の特徴から親が①ケア(在宅での治療)の専門家になり、②適切な治療を受けられるように環境を整え、③先天代謝異常症の予後と治療の不確かさや、④反発する子どもを育てる難しさを感じながらも、⑤ケアが必要な患児優先の生活を送っていることが明らかとなった。また、先天性の内分泌疾患と診断された小児の家族の療育行動や療育の現状についても文献検討を行い、治療の簡便さなどが急性発作を予防する療育行動に関連することなどが明らかとなった。 児の急性発作の予防に関する家族の知識と療育行動を明らかにする目的で、医師を対象とした面接調査を実施した。その中で、有機酸代謝異常症は希少疾患であり、多くの症例を経験している医師が少ない状況であることが明らかとなった。そのため、対象を有機酸代謝異常症だけでなく脂肪酸代謝異常症などを含む先天代謝異常症の診療を専門とする医師に拡大した。現在、全国計9名の専門医の同意を得て、①代謝異常症における疾患の特徴や発症予防のための治療や生活上の留意点に関する認識、②児と家族への指導の必要性と現状の取り組みについて面接調査を進めている。 さらに、当事者グループとメンバーの相談内容について分析した2事例から、家族は共通の経験をもつ家族会とのつながりや情報交換から急性発作の予防を必要とする育児に取り組む希望を見出すことが明らかになった。このことから、当事者グループの役割として相談支援が重要であると考えられるため、家族会代表者だけでなくメンバーも相談支援に取り組めるように「相談支援実施マニュアル」を作成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先天代謝異常症において、家族や患児・患者が発症予防行動を確立し継続するための課題に関する研究は、国内外ともに少なく、特に疾患コントロールのための生活全般の管理のあり方やシックデイの対応に関する医療機関での説明、発症予防のための生活を支える社会資源は明らかにされていない。そのため、急性発作の予防に関する患児家族の意識や療育行動に関する質問紙調査の項目作成と介入プログラムの作成が遅れていた。そこで、先天代謝異常症と診断された子どもの親に求められる急性発作予防に関する療育行動と療育上の課題を明らかにするための予備調査として、医師の家族指導・教育に関する取り組みについて面接調査を実施しているが、全国の専門医との日程調整に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、患児の急性発作予防のための家族指導・教育に関する医師の取り組みについて面接調査を行った。2019年度は、2018年度に面接調査の対象となった医師から患児・家族を紹介いただき、家族の急性発作予防のための療育行動とその影響要因について調査し、介入調査の協力を依頼する。 また、当事者グループの相談支援に関するマニュアル作成については、2019年度に新しく相談内容のデータを募るだけでなく、2018年度までに分析した2事例についてもマニュアル作成のための分析を行う。相談支援実施マニュアルを作成し、それをデータ提供のあった当事者グループを中心に介入調査の協力を依頼し、運営に活用できるための教育プログラムを実施する。 なお、調査ごとに成果を論文などにまとめ、学会発表や学会誌にて公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
急性発作の状況と予防のための療育行動を明らかにするための面接調査に時間を要し、当初の計画通りに研究を進めることができなかった。研究の遅延に伴い、分析ソフト購入、介入調査に関する移動費・謝金、論文執筆や投稿に関する支出が少なかったため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、SAS統計ソフトやオフィスソフトなどの調査分析に関する物品費(60万円)、面接調査に関する旅費(5万円)と謝金などの人件費(5万円)にあて、その残金を英文校正などの論文投稿に関する費用やパンフレット、マニュアルの印刷など介入調査に関する費用として使用する。
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