研究課題
本研究の目的は、「機会の平等」と「結果の平等」という2種類の社会的平等を考慮に入れた複合的な公平性判断がどのような脳内メカニズムによって実装されているかを機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて明らかにすることである。研究計画の2年目である2017年度は、初年度に得たfMRI実験の結果を国内外の学会で発表した。神経科学分野における世界最大の学会である北米神経科学大会では口頭演題として採択された。さらに、多ボクセルパターン解析法(multivoxel pattern analysis)を用いたfMRIデータの分析により、「経済的価値(意思決定の効用)」と「規範的価値(社会的平等)」が前頭前野腹内側部において別々の情報としてコードされていることを見出した。この所見は独立したサンプル(健常大学生28名分)から取得したfMRIデータでも再現され、前頭前野腹内側部における価値情報の表現様式に関する近年の議論に新たな示唆を与えるものと期待される。2年間の研究計画の総括として、1) マルチバンドEPI法による高時間解像度でのfMRIデータ取得、2) 表象類似度(representational similarity)に着目した多ボクセルパターン解析法の適用、3) 集団社会実験とfMRI実験の組み合わせによる実験経済学と脳機能イメージングのフォーマルな形での融合、という3点を達成し、社会的意思決定の神経基盤に関する極めて新奇性の高い学術成果を得ることができたといえる。
すべて 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)