研究課題/領域番号 |
16K21303
|
研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
中嶋 名菜 熊本県立大学, 環境共生学部, 助手 (40614631)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 真空調理 / 調味液濃度 / 野菜 / テクスチャー / 官能評価 |
研究実績の概要 |
真空調理は栄養成分の保持,調味料の低減など様々な利点がある一方で,品温が低下すると,茹で調理食品よりも飲み込みやすさがより悪化する。そこで,真空調理食品の飲み込みやすさに関する至適調味液濃度を検討した。 試料はジャガイモ,ニンジン,タマネギ,調味液は,標準条件を調味液1,標準条件の砂糖重量を2倍にした調味液2,標準条件と甘さを同等にし,みりん(砂糖の代用)を用いた調味液3の3種類を用いた。試料と調味液を真空包装し,スチームコンベクションオーブンで30分間加熱した(スチームモード,温度95℃,湿度100%)。テクスチャーは,えん下困難者用食品の試験方法に基づいた。官能評価は,健康な女子学生(21~22歳)30名をパネラーとし,試料のコントロール(品温45±2℃)と比較して低温条件(品温20±2℃)がどうであるか,7点法を用いて評価をした。 テクスチャー測定の結果,調味液間の比較では,ジャガイモ,タマネギはともに有意差は認められなかったが,ニンジンについては,コントロールで硬さが調味液3より調味液1が有意に高く,低温条件で凝集性,付着性ともに調味液2より調味液1が有意に高かった。また,温度条件間の比較では,硬さはニンジンの調味液3で低温条件が有意に高く,凝集性はニンジンの調味液1で低温条件が高く,タマネギの調味液1でコントロールが有意に高かった。官能評価では,ジャガイモで「ねっとり感」が調味液2より調味液3が有意に低く,ニンジンで「なめらかさ」が調味液1より調味液3が有意に高い傾向を示し,タマネギで「歯ごたえ」が調味液3より調味液2が有意に高かった。以上のことから,みりんを砂糖の代わりに用いると,軟らかく,品温低下時にもなめらかに仕上げることができる可能性が示唆されたが,その影響については,食品間で相違があると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は真空調理食品の飲み込みやすさに関する至適調味液条件のうち,調味液濃度の差異が野菜の飲み込み易さに及ぼす影響の検討を目標としており,目標にそった研究を行った。食品間に相違はあるものの,砂糖添加量を増加させた調味液2では,品温が温かく保たれた状態では軟らかく,品温低下時にもおいしく仕上がるが,硬化は他の調味液よりも促進されることが示唆された。 一方で,砂糖の代わりに本みりんを用いた調味液3では,固形重量の変化が抑制され,軟らかく,品温低下時にもなめらかに仕上げることができる可能性が示唆された。 このことから,本みりんを用いて煮物を調理することで,固形中成分の溶出が抑制され,食品の栄養機能を保持することができる可能性が示唆されたが,この作用については,食品物性の相違によって異なると考えられた。また,今回は加熱時間を30分としてすべての試料を調理したが,既報において,加熱時間により付着性に経時変化が認められていることから,今後は予定通り平成29年度に加熱時間による検討を行う。 熊本地震の影響により研究の進行が遅れたため,平成28年度に予定していた研究成果発表は実施しなかった。以上より,平成28年度の目標はおおむね順調に進展していると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は真空調理食品の飲み込みやすさに関する至適調味液条件のうち,加熱時間を検討する。加熱温度は95℃とし,加熱時間は30,45,60,90分間で検討し,テクスチャー(硬さ,付着性,凝集性)の値が維持できる加熱時間帯を明らかにする。さらに平成30年度は平成28年度,平成29年度で得られた至適プロトコールが保存期間に影響するかを検討する。時間は平成29年度で明らかになった時間,さらにその時間の1.5,2倍の時間を採用する。保存期間は,一般に真空調理食品は冷蔵で5日間以内に利用することから(新調理技術協議会 2007)保存期間の条件を0日間,3日間,5日間,7日間とする。 また,得られた研究結果を整理して,国内外の学会および学術雑誌に成果を報告する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
熊本地震の影響により,若干研究内容を縮小したため,消耗品,測定補助等の人件費,研究成果発表などの支出に変更が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究を円滑に進めるために,消耗品,測定補助等の人件費に追加して使用する計画である。また、平成28年度に予定していた国内での研究成果発表を行うため,次年度に予定していた国内、国際学会や学会誌で報告する費用に追加して使用する計画である。
|