研究実績の概要 |
免疫組織化学法によってラット頚動脈小体における感覚神経終末の形態学的特徴を解析した。その結果、頚動脈小体に分布する感覚神経終末はP2X2型およびP2X3型ATP受容体の陽性反応を示しており、平板状の末端部を形成して化学受容細胞の集団を緊密に取り囲んでいた。神経終末の立体再構築像により、一部の神経終末は樹枝状や杯状といった多様な末端部を形成して化学受容細胞と接していることが分かった。多重染色により感覚神経終末と化学受容細胞との関係性を調べると、チロシン水酸化酵素(TH)陽性反応を示す細胞には神経終末が認められるが、ドパミンβ-水酸化酵素(DBH)陽性の細胞には神経終末は密に分布していなかった。したがって、化学受容細胞に発現するカテコールアミン合成酵素の分子によって神経支配に違いがあることが示唆された。 さらに、頚動脈小体の化学受容細胞と感覚神経終末に発現するグルタミン酸受容体について検索した。グルタミン酸受容体のうち、頚動脈小体ではAMPA型1-4、カイニン酸型GluK2,3,5、NMDA型GluN1,2A,2B、代謝型mGluR1,5,7のmRNA発現が認められた。一方で、感覚神経の神経細胞体が集合する舌咽神経遠位神経節では AMPA型1-4、カイニン酸型GluK1-5、NMDA型GluN1,2A,2B、代謝型mGluR1-7のmRNA発現が認められた。以上から、グルタミン酸は頚動脈小体の化学受容細胞と感覚神経終末の双方に作用する可能性がある。
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