研究課題/領域番号 |
16K21307
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
柿坂 啓介 岩手医科大学, 医学部, 助教 (40583563)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪肝炎 / Rubicon / カスパーゼ9 / オートファジー |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪肝炎におけるオートファジー抑制とアポトーシス亢進がどのように起こるか、また非アルコール性脂肪肝炎が重症になると出現する肝細胞の風船化がどのようにして起こるのかを解明することを目標として研究を行った。高脂肪食摂取マウス(HFD)は、12週の食餌負荷で正常食摂取マウス(Cont)と比較して肝酵素上昇と脂肪肝を呈し、肝組織中のLC3-II、p62の発現が亢進していた。オートファジー過程の後期でオートファゴソームとリソソームの融合を抑制する蛋白であるRubiconの発現も亢進していた。マウス脂肪肝モデルで肝炎が起こることを確認し、同時にオートファジー過程に影響が出ている可能性を確認した。 詳細な機序検討のためマウス培養肝細胞AML12に毒性脂肪酸である飽和脂肪酸(パルミチン酸)を添加した。用量・時間依存性にLC3-IIとp62の発現が亢進した。パルミチン酸600μM及び添加後4時間でRubiconの発現が亢進し、細胞死は800μMおよび添加後6-10時間で多く観察された。Rubicon発現を抑制したところオートファジーが進行し、細胞死が抑制された。強く細胞死をおこすパルミチン酸の投与条件でRubiconの蛋白発現量が減少していたため、Rubicon発現と細胞死に関わる経路が関係していると推定しJNK阻害剤やカスパーゼ阻害剤を添加した。その結果、JNK阻害剤でRubiconの発現が抑制され、RubiconのmRNA発現も抑制されていたためRubicon発現はJNKによることが判明した。カスパーゼ9阻害剤でRubicon発現が亢進したため、発現低下は蛋白の分解によるものと想定された。パルミチン酸投与にカスパーゼ9阻害剤を添加すると細胞径が増大しRubicon発現抑制で、増大は抑制された。Rubiconとカスパーゼ9が肝細胞の風船化に関与している可能性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎実験が順調であったため、おおむね計画通り進行できている。
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今後の研究の推進方策 |
計画書通り臨床検体を用いた研究の予定であるが、検体取得のための同意数が増えていない状況である。外来・入院を含めた臨床に従事している時間に研究内容について対象患者に詳細に説明し、同意を取得する努力を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒト検体を用いた研究を予定していたが(施設内倫理委員会で認可済)、対象の目標同意数に達せず、これに伴う実験が遅滞しているため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度中に同意取得する対象数が目標数に達する予定であり、その後miRNA発現や肝組織中の免疫染色を行っていく予定である。
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