研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-alcoholic fatty liver disease: NAFLD)の病態進展に伴い出現する風船様肝細胞(Ballooned hepatocyte:BH)は、肝病理組織所見において非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis: NASH)の診断根拠になる。NAFLDの進展を予防し、病態を制御するためにBHの形成機序の解明とそれに基づいたNASHの病態解明が重要である。 脂肪毒性による肝細胞アポトーシスに関わるシグナルがRubiconを介してオートファジーを抑制していること、RubiconがCaspase9に分解されること、Caspase9阻害によるRubicon分解抑制とアポトーシスシグナルがBH様変化に重要であることを報告した(World J Gastroenterol. 2016 Jul 28;22(28):6509-19.)。NASH病態におけるBHの臨床的意義を評価するために1年以上観察し得た肝生検で診断されたNAFLD患者127名を対象に、血液検査結果を用いた肝線維化指標(FIB-4)の観察期間内の変化と年齢、性別、身体計測値、肝生検組織所見を比較した。多変量解析の結果、NASH群でFIB-4の変化に影響する因子はBHの有無のみであった。線維化のみがNASHの予後に影響を与えるとの報告があるが、線維化のない群でもBHが観察される群では将来、線維化が進展する可能性があり慎重な経過観察の必要性が明らかになった(J Gastroenterol. 2018, in press)。 以上の研究成果より、BHが治療標的になり得ることがわかった。一方で、なぜ一部の細胞のみがBH様の変化をきたすのかは不明であり、NASHの病態解明とそれに基づいた新規治療戦略の確立に向けた今後の課題と考えている。
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