研究実績の概要 |
本年度においても, 休眠遺伝子解除に繋がる様々な培養条件検討を基盤に新規二次代謝産物の探索研究を主に遂行し, 以下の成果が得られた. (1) 2019年にサンディエゴ, 沖縄県と宮城県より分離した海洋由来および植物内生糸状菌株のうち20株を用いて種々の培養条件検討を実施した. (2) 海洋糸状菌Trichoderma sp. TPU199株はNaI添加培地にて培養することで, 分子中にIを取り込んだ新規epipolythiodiketopiperazineを生産することが分かっていた. 同培養液を更に精査することで含I代謝物を中間体として生成されたと考えられる2成分の新規類縁体を見出したのと同時に3成分の新規trichothecene類(trichobreols A-C) を単離した. Trichobreol類は酵母様真菌に対して抗真菌活性を示した. そこで通常の条件下で得られた本菌株の培養液を, 抗真菌活性を指標に分離したところ, 新たに2成分の新規類縁体を見出した. また, trichobreol A より5成分の誘導体を調製し, 構造活性相関の一部についても明らかにした. (3) 前年度までに確立した手法を用いてTPU199株の高濃度NaI耐性菌株を作製したところ, 菌の生育と代謝産物の生産量向上が確認され, 新たに確認された代謝産物の解析を進めている. 同手法を菌株分離段階に適応した耐性菌株の取得についても継続して行なっている. (4) インドネシアのマメ科植物の根より得た放線菌Streptomyces sp. TPU1401A株の培養液中よりstreptpyrone Aを天然より初めて見出し, 本菌株がイソフラボンを特異的に配糖化することが分かった. 配糖化イソフラボンにはアグリコンよりも強く菌の生育を高める作用が見られ, マメ科植物と本菌の共生関係の一端が示された.
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