研究課題/領域番号 |
16K21311
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
根本 亙 東北医科薬科大学, 薬学部, 助教 (80635136)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 神経障害性疼痛 / アンジオテンシン / 脊髄 / マウス |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究成果により、2型糖尿病モデルであるレプチン欠損ob/obマウスが生後11週目から14週目にかけて接触性アロディニアを誘発することを明らかにした。今年度は温熱刺激に対する閾値を検討する目的で、Plantar試験を行った。その結果、ob/obマウスは生後10週目から14週目にかけて温熱刺激に対する閾値が有意に低下していること明らかとなった。加えて、マウスの脊髄における各種アンジオテンシン (Ang) 系構成因子の発現量の変化をWestern blot法により解析したところ、ob/obマウスは野生型 (WT) マウスと比較してMas受容体の発現量が低下していることを見出した。一方で、アンジオテンシノーゲン、AT1受容体、Ang変換酵素の発現量に変化は認められなかった。そこで次に、Mas受容体のアゴニストであるAng (1-7) を脊髄クモ膜下内 (i.t.) 投与し、その効果を検討したところ、ob/obマウスで認められる接触性刺激および温熱刺激に対する閾値の低下はAng (1-7) (30 pmol) 単回投与により有意に改善した。さらに、このAng (1-7) による抗アロディニア作用はMas受容体アンタゴニストA779 (1 nmol) のi.t.投与により消失することが明らかとなった。以上の結果より、ob/obマウスの脊髄ではAT1受容体/Ang II系がMas受容体/Ang (1-7)系よりも相対的に有意になっており、そのことが接触性刺激および温熱刺激に対する閾値の低下の原因となっている可能性が示唆された。一方、Ang (1-7) をi.t.投与することにより脊髄内のMas受容体を介した抗アロディニア作用が誘発されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レプチン欠損ob/obマウスで認められる痛覚過敏に対するアンジオテンシン (1-7) の有効性を見出すことができたことに加え、当初の計画通りメカニズムを明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
レプチン欠損ob/obマウスは一過性の痛覚過敏を誘発したが、血糖値は生後5週目をピークに徐々に低下していった。一方で、予備実験ながらレプチン受容体欠損db/dbマウスはob/obマウスよりも持続的な高血糖状態を認めることを確認しているため、db/dbマウスを用いた検討も行う予定である。 また、坐骨神経部分結紮マウスを用いて痛覚過敏に対する脊髄内アンジオテンシン系の変化も併せて検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
レプチン受容体欠損db/dbマウス購入のための費用の為に残しておいた経費であったが、実験の進行状況の関係で、翌年度に購入することとなった。
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