わが国では脳・心臓疾患や精神疾患等の健康障害を防止するため長時間労働者の抑制が急務とされ、長時間労働対策は社会的に重要な課題となっている。平成30年に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立し、改正後の労働基準法で時間外労働の上限規制が導入されるなど、長時間労働対策の重要性が増している。そこで本研究は、長時間労働者に抑うつを引き起こす危険要因を明らかにすることを目的とした。 本研究では、長時間労働者に対して属性・就業関連要因・抑うつ等を調査項目として含むアンケート調査をweb又は質問紙で実施した。平成30年度にベースライン調査を実施し、令和元年度に1年後調査を実施した。ベースライン調査の前月に月60時間以上の時間外・休日労働を行った労働者を調査の対象とした。複数の企業に本研究の説明を実施し、最終的に四社からアンケート調査実施の協力を得ることができた。当初は日本語のアンケートのみを使用予定であったが、調査対象者に外国人の労働者も多数含まれることとなり、日本語版とともに英語版のアンケートを作成した。平成30年度にベースライン調査として合計約500名にアンケート調査を実施し、約300名がwebで回答または質問紙を返送した。令和元年度は1年後調査を実施し、約200名がwebで回答または質問紙を返送した。 これらの結果をSPSS Statisticsを用いて解析予定であったが、上記調査結果の解析の合理性及び汎用性の担保の観点から、調査における研究対象者及び質問紙の内容の見直しが適格であることが明らかとなった。本検討により、適格な解析に重要な研究対象者のリクルート及び質問紙の作成に資する重要な事項が種々明確になり、次回以降の本研究の継続を含めた調査手法の方向性を見出すことにできた。また、本調査により、断片的ではあるが目的とするデータ及び調査の一端が実現できた。
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