アルツハイマー型認知症の原因因子とされる脳内Aβ沈着がコレステロール酸化代謝物のひとつである24S-HCの脳内増加によって抑制される可能性が報告されてきた。その中、NCEH1欠損マウスの脳では野生型マウス脳に比べて24S-HCが有意に増加していた。そこで、NCEH1が脳内24S-HC量を規定することにより脳内Aβの沈着を制御する可能性を検討した。細胞実験ではACAT1阻害剤およびNCEH1阻害剤と24S-HCをSH-SY5Y細胞に作用させ、TUNEL染色法及びMTT assay にて細胞死を評価した。ACAT1 阻害剤では24S-HCが誘発する細胞死を有意に抑制した。次いでACAT1阻害剤及びNCEH1阻害剤の24S-HC添加時におけるAPP産生タンパク(APP、ADAM10、BACE-1、PS-1)への影響をwestern-blotting 法にて評価した結果、24S-HC添加時に見られたAPPタンパクの発現増加は阻害剤添加では影響を与えなかった。また、細胞内24S-HC含量を測定した結果、 ACAT1阻害ではfree体が、NCEH1阻害ではester体が有意に増加していた。さらに、ELISA 法にてAβ分泌への影響を評価した結果、24S-HC 添加時に見られたAβ1-40及びAβ1-42 分泌低下はACAT1阻害剤でのみ抑制された。動物実験ではAPP oligomer 過剰発現マウスおよびNCEH1欠損APP oligomer 過剰発現マウスの脳切片を作製し、免疫組織化学染色法にてAβ oligomer の蓄積を評価した結果、NCEH1を欠損させたAPP oligomer 過剰発現マウスではAβ oligomer の沈着が有意に増加した。以上の結果より、NCEH1が脳内24S-HC量を規定することにより脳内Aβの沈着を制御している可能性が示唆された。
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