研究課題/領域番号 |
16K21318
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
高橋 学 自治医科大学, 医学部, 講師 (70406122)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肥満 / リポ蛋白リパーゼ / マクロファージ / 炎症 / 線維化 |
研究実績の概要 |
先天的肥満モデルマウスであるob/obマウスにおいて、マクロファージLpL(MLpL)を欠損すると雄雌ともに体重増加が抑制される一方で、食餌性肥満モデルと同様に炎症細胞浸潤と間質の線維化が増悪した。白色脂肪組織のmRNAの遺伝子発現では、M1(炎症性)マクロファージが増加し、線維化に関わるTGFβ1やTIMP1の発現が増加した。磁気細胞分離法で脂肪組織マクロファージを採取し、検討したところ、白色脂肪組織全体と同様に、LpL欠損マクロファージでは、TGFβ1やTIMP1の遺伝子発現が増加した。したがって、マクロファージ由来のTGFβ1やTIMP1が線維化の増悪に関わっていると考えられる。さらに、エフェロサイトーシスに関わる遺伝子発現を検討したところ、発現に差を認めていた。耐糖能については、脂肪組織の機能不全を反映してMLpLKO:ob/obで悪化することを予想したが、改善傾向となっていた。一方で、血清脂質は、ob/obに比してMLpLKO:ob/obでは総コレステロールは低下する一方で、中性脂肪は上昇した。肝臓からのVLDL産生はMLpLKO:ob/obで増加し、ヘパリン投与後の血清LpL活性はMLpLKO:ob/obで低下した。白色脂肪組織におけるLpLの遺伝子発現はMLpLKO:ob/obで低下した。血清脂質の変化は脂肪組織の機能不全による影響が疑われた。 脂肪組織のマクロファージLpLは欠損すると脂肪組織の線維化が増悪することから、脂肪組織の機能維持に重要な役割を果たしていると考えられる。そのメカニズムとして、エフェロサイトーシスに関わる遺伝子発現に差がみられていることから、肥満によって増加する壊死脂肪組織の処理に関わっていることが推測される。今後in vitroにおいて、壊死脂肪細胞の処理におけるLpLの役割について検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
肥満脂肪組織より分離したマクロファージにおいて、欠損マウスでは線維化に関わるTGFβ1やTIMP1の遺伝子発現が増加することやエフェロサイトーシスに関わる遺伝子発現に変化が見られることが確認できた。しかし、脂肪組織の線維化のメカニズムに関する解析に遅れがあり、上記区分と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
マクロファージLpL欠損が肥満モデルにおいて脂肪組織線維化増悪に関わっており、重要な知見と考えている。そのメカニズムの可能性として、脂肪組織より単離したマクロファージにおいて、エフェロサイトーシスに関わる遺伝子発現に差を認めたことから、壊死脂肪組織の処理にマクロファージLpLが関わっている可能性が推察される。そのメカニズムの解明のため、in vitroの実験系で、壊死脂肪細胞のマクロファージによる貪食能などを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、肥満脂肪組織より分離したマクロファージにおいて、欠損マウスでは線維化に関わるTGFβ1やTIMP1の遺伝子発現が増加することやエフェロサイトーシスに関わる遺伝子に変化がみられることを確認できた。しかし、欠損マウスではなぜ線維化を誘導する方向にマクロファージが変化をするのかが未解決であり、延長することにした。in vitroの実験系で、壊死脂肪細胞のマクロファージによる貪食能などを検討する予定である。
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