先天的肥満モデルマウスであるob/obマウスにおいて、マクロファージLpL(MLpL)を欠損すると雄雌ともに体重増加が抑制される一方で、食餌性肥満モデルと同様に炎症細胞浸潤と間質の線維化が増悪した。白色脂肪組織のmRNAの遺伝子発現では、M1(炎症性)マクロファージのマーカーが増加し、線維化に関わるTGFβ1やTIMP1の発現が増加した。脂肪組織マクロファージを採取し、検討したところ、白色脂肪組織全体と同様に、LpL欠損マクロファージでは、TGFβ1やTIMP1の遺伝子発現が増加した。したがって、マクロファージ由来のTGFβ1やTIMP1が線維化の増悪に関わっていると考えられた。さらに、エフェロサイトーシスに関わる遺伝子発現を検討したところ、発現に差を認めていた。耐糖能については、脂肪組織の機能不全を反映してMLpLKO:ob/obで悪化することを予想したが、改善傾向となっており、脂肪重量減少を反映している可能性が考えられた。一方で、血清脂質は、ob/obに比してMLpLKO:ob/obでは総コレステロールは低下する一方で、中性脂肪は上昇した。ヘパリン投与後の血清LpL活性はMLpLKO:ob/obで低下した。白色脂肪組織におけるLpLの遺伝子発現がMLpLKO:ob/obで低下した。血清脂質の変化は脂肪組織の機能不全による影響が疑われた。 脂肪組織のマクロファージLpLは欠損すると脂肪組織の線維化が増悪することから、脂肪組織の機能維持に重要な役割を果たしていると考えられる。そのメカニズムとして、エフェロサイトーシスに関わる遺伝子発現に差がみられており、マクロファージLpLは肥満によって増加する壊死脂肪組織の処理に関わっていることが推測される。
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