本研究課題は、発達障害に合併することが多い斜視や弱視など眼科疾患の検出率を目標とした従来の幼児健康診査(健診)において健診の有効性の向上を目指すことが主な目的である。 3~6歳の未就学児における眼鏡などによる屈折矯正が必要な児の割合は2.4%であり、そのうち54%は眼鏡未装用の状態であった。また、眼位異常は2.3%に認められ、そのうち45.9%には眼科受診歴がなかったことが判明した。従って、未就学児において弱視や斜視は比較的高頻度に認められ、さらにその半数程度は未治療の状態であることが判明した。さらに、三歳児健診における判定状況に関して、弱視や斜視のために通院中の患児を対象に調査を行ったところ80.0%の患児は三歳児健診時に眼科受診を勧められていなかった。地域によって健診の方法に多少の違いがあるためばらつきがあるかとは思うが、健診の見逃しが少なからず存在していることが示唆された。 三歳児健診の視覚検査の1次健診において使用されている保護者などが回答する眼に関するアンケートに関して、その有効性や改善点について調査を行った。弱視や斜視の患児の保護者に、現在の三歳児健診の眼に関するアンケートでよく使用されている質問項目に回答していただき、さらにアンケート内容に対する意見の聞き取り調査を行った。弱視においてはテレビの視聴距離を問う項目、斜視においては視線が合わないことについて問う項目で比較的検出率が高かったが、その他の弱視や斜視をターゲットにした項目では検出が困難であるという結果が得られた。 斜視検査の未経験者において、認識可能な斜視の大きさは20△程度以上の大きな角度の斜視であり、20△より小さい角度の斜視は認識が難しいことが判明した。従って、健診の対象となる小児と生活を共にしている保護者などが回答するアンケートでは、弱視や斜視を検出することが困難であることが示唆された。
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