研究実績の概要 |
全身性骨代謝異常に関わる主要な細胞の一つは破骨細胞があり、破骨細胞分化誘導因子(RANKL)刺激により単球・マクロファージ系前駆細胞の細胞融合で形成される多核巨細胞である。一方、我々はこれまでに、炎症性サイトカイン(TNFα+IL-6)刺激によりマウス骨髄単球の細胞融合で形成される多核巨細胞[破骨細胞様細胞(osteoclast-like cells;OLCs)]が分化誘導されることを報告した(Yokota et al., Arthritis & Rheumatology, 2014)。最も多い自己免疫性疾患である関節リウマチ(RA)患者と、健常人から採取・分離した末梢血単核球の破骨細胞とOLCsの分化誘導能の違いとその分化誘導に関連する因子について調べた。
RA患者(n=7)と健常人(n=6)から採取・分離した末梢血単核球をRANKLまたはTNFα+IL-6刺激・培養し、破骨細胞またはOLCsへ分化誘導させ、それぞれの細胞数を測定した。また、採取された血清中の自己抗体価およびサイトカイン濃度を測定した、 その結果、RA患者の末梢血から分離した単核球は、健常人と比較して、破骨細胞およびOLCsへの分化誘導能が有意に亢進していた。また、RA患者において、血清中の抗環状シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体)40 U/mL以上例(n=4)は、40 U/mL以下例(n=4)と比較して、破骨細胞およびOLCsへの分化誘導能が有意に亢進していた。そして、抗CCP抗体40 U/mL以上例は、40 U/mL以下例と比較して、全身の骨密度が低下していた。
以上よりRAにおける骨粗鬆症には、破骨細胞およびOLCsへの分化誘導能の亢進が関与しており、血清中の抗CCP抗体価との関連性が示唆された。また、抗CCP抗体価はRAの新たな骨粗鬆症の予測因子となる可能性が示された。
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