研究実績の概要 |
DNA損傷修復機序は化学療法、また放射線抵抗性機序に関わると考えられる。 子宮体癌において、DNA修復経路を抑制することによる抗腫瘍効果の増強について検討を行った。 子宮体癌細胞株(HEC-6, HEC-108, HEC-1B, HEC-50B)に化学療法薬(ドキソルビシンn)及びATMまたはATR阻害薬を加え、コロニーフォーメーションアッセイによる抗腫瘍効果の増強効果とDNA障害経路の分子(p-ATM, p-Chk2, p-ATR, p-Chk1, and γ-H2AX)の燐酸化の抑制についてウェスタンブロッティングにて検証した。ドキソルビシンはp-ATM, p-Chk2 およびγ-H2AXのリン酸化を誘導したが、-ATR and p-Chk1 のリン酸化の増強は見られなかった。p-ATM, p-Chk2 およびγ-H2AXの活性化はATM inhibitorによって抑制され、ドキソルビシンとATM抑制剤の併用によって、濃度遺存的に抗腫瘍効果が増強した。 以上の結果より、p-ATM, p-Chk2 およびγ-H2AXはドキソルビシンに対する抵抗性の増強に関与していると考えられ、ドキソルビシンとATM阻害薬の併用は子宮体癌の治療において有用である可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
ATM阻害薬の他に、DNA修復阻害薬であるPARP阻害薬は卵巣癌では臨床試験が進んでいる。 ATM阻害薬に加え、PARP阻害薬についても下記の如く研究を進めていく。 ①DNA修復経路を標的とした治療薬の併用療法についての検討、②DNA修復経路に関わる分子の機能解析、③相同組換修復異常を標的としたPARP阻害剤の感受性に関わる因子の探索 子宮体癌再発症例において、PARP阻害剤を活用していくことで、治療対象症例を広げられる可能性がある。抗癌剤や放射線とPARP阻害剤を併用することで、抗腫瘍効果の増強が得られるか検討していく。 ・併用する分子標的薬を子宮体癌細胞株に添加した状態で、放射線照射、またはPARP阻害剤添加を行い、Clonogenic assay, Flow cytometry, アポトーシス検出実験(Annexin V法他)にて治療効果を検証する。細胞株毎で比較することで、併用療法の効果を予測するバイオマーカーを同定する。・in vivoにおける放射線照射と分子標的薬併用療法の有用性の検証. 子宮体癌細胞株を移植したヌードマウスにおいて、放射線照射/PARP阻害剤と分子標的薬の併用治療を行い、in vivoでの腫瘍縮小効果を確認する。・腫瘍組織から蛋白、RNAを抽出し、標的薬による阻害効果、細胞死誘導効果について、Western blotting、Real time PCR法、TUNNEL法にて検証する。・毒性が問題となる場合には、用量設定のほか、同一経路の別因子の阻害薬の使用も検討する。ヒトでの臨床試験における使用経験のある薬剤を優先的にin vivoで用いることとし、臨床試験への橋渡しを促進するように努める。
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