本研究は、科学革命の潮流と宗教改革の潮流が交差する初期近代の「宗教的パラケルスス主義」と呼ばれる思想運動について、これの初期段階に焦点を当て、そこに現れる自然神学的な思想を明らかにした。とりわけパラケルスス主義者パウル・リンクの著作『三時代について』(1599/1602)および偽パラケルスス文書『医師たちのティンクトゥアについて』(初版1570)を取りあげ、そこに見られる終末論的な議論(救済史の枠組み、三時代論、「黄金の時代」への期待、化学的な聖書解釈、終末における学問の進歩)を取りだすとともに、それらを当時の歴史的な文脈(中世スコラ主義との対決、宗派化の時代)に位置づけた。
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