一般的に脂肪肝の予防改善方法として、食事制限が推奨されている。多くの人は、食事制限を行うことで脂肪肝の予防や改善が可能となるが、わずかながら、食事制限による脂肪肝予防改善効果が認められない人が存在する。 本研究では、食事制限による脂肪肝予防への影響に個人差があることを、運動不足の有無により説明ができないか?という仮説をもとに検証を行った。 遺伝的に通常よりも活動性が低く、骨格筋の発達が未熟であるラットの観察において、肝臓への脂肪酸取込や細胞内脂肪酸輸送に着目をして検討を進めたところ、肝臓内のFatty acid translocase (FAT)/CD36とFatty acid-binding protein (FABP1)が肝トリグリセリドと関係が強いことが見いだされた。さらに、脂肪組織の脂肪分解酵素たんぱく質の検討から、脂肪組織の脂肪蓄積予備能力と脂肪肝との関係が重要となる可能性が示唆された。一方、骨格筋量との関係を探るために、局所的に骨格筋萎縮を誘導したラットにおける検討において、食餌制限の実施により脂肪肝を重篤化させるような結果は観察されなかった。 本研究の結果より、食事制限による脂肪肝予防への影響は、運動不足か否かにより異なることが示唆された。食事制限を実施し、体重の過剰な増加を抑制した場合であっても、運動不足条件下においては脂肪肝の予防・改善にはつながらない可能性が考えられる。一方、同様の食餌制限を実施し、身体活動量を増加させた場合には、肝臓への脂肪蓄積につながる代謝変化は観察されなかった。詳細なメカニズムやヒトへの適用については、更なる研究が必要であるが、食事制限と身体不活動の組み合わせが肥満とは無関係に肝脂肪蓄積を亢進させる可能性があることが明らかとなった。
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