本研究では,再生能力の乏しい関節軟骨の変性の進行を防止するために早期診断が期待されている臨床的に応用可能で非接触・低侵襲的に関節軟骨の力学的機能を定量的に評価する手法の開発を目的としている.力学的機能を定量的に評価するために,音響加振を用いて高含水率である関節軟骨を加振し,得られる振動減衰特性に基づき,関節軟骨の弾性・粘性係数を同定する手法を提案する.提案した手法によって関節軟骨の力学的機能を定量的に評価することができれば,非接触的に機能を低下を診断することが可能となる.将来的に関節外からの音響加振とMR撮影技術を組合せることによって機能の低下部位の可視化も可能と考えられる. 本研究の目的を達成するために,1)振動計測システムの構築および妥当性の検証,2)変性度による力学的機能の変化を計測可能,の2点を示す必要がある. 昨年度(平成28年度)は1)振動計測システムを構築した.関節試料ファントムとしてゼラチンプレートに対して加振試験を行い,励起した横波の位相速度と加振周波数の関係を計測することによって,ファントムの粘性・弾性係数を同定することができた.今年度(平成29年度)は2)変性度による力学的機能の変化を検討した.ゼラチン濃度の異なるファントムに対して計測試験を行った結果,ゼラチンの含有量と弾性係数が正の相関があることが示した.ブタより採取した関節軟骨サンプルに対して,粘性・弾性係数の同定に成功した.よって,本提案手法の有用性を示すことができた.
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