研究実績の概要 |
平成29年度には、高温領域(400℃―600℃)においてホモロガスIn2O3(ZnO)m薄膜の導電性に関する欠陥形成メカニズムと電気伝導機構を解明した。スパッタ法によりエピタキシャルIn2O3(ZnO)m(m=2,3,5)薄膜を作製した。ドイツのダルムシュタット工科大学の高温in-situホール測定装置を用いて、様々な酸素分圧でIn2O3(ZnO)m薄膜のキャリア密度と移動度を調べ、高温でのキャリアの発生源を検討した。Brouwer Diagramを用いて、高温でのホモロガスIn2O3(ZnO)m薄膜のキャリア発生源は酸素空孔以外に、Znフレンケル欠陥の形成によりできた格子間亜鉛も寄与することを解明した。この研究成果はIUMRS-ICAM 2017国際会議でAward for Encouragement of Research賞を受賞した。
また、アモルファスIn2O3-ZnOからホモルガスIn2O3(ZnO)mへの固相反応に関する理論を構築するために、ガラス基板上に作製したアモルファスIn2O3-ZnO薄膜を様々な温度で焼成し、その場XRD測定を用いてアモルファスIn2O3-ZnO薄膜の結晶化に関した活性化エネルギーを求め、広域X線吸収微細構造(EXAFS)の測定を用いて結晶化する際の局所構造の変化を解明した。この研究は2017 MRS Fall Meetingで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度は、ホモロガスIn2O3(ZnO)m薄膜の導電性に関する欠陥形成メカニズムと電気伝導機構を解明した。さらに、アモルファスIn2O3-ZnOからホモルガスIn2O3(ZnO)mへの固相反応に関して、その場XRD及びEXAFS測定を用いた実験調査を行った。現在、実験データに基づいて、理論的な解明を進めている。最後、アモルファスIn2O3-ZnOからホモルガスIn2O3(ZnO)mへの固相反応に関して開発した実験的な研究手法はアモルファスIn-Ga-Zn酸化物(IGZO)の結晶化に応用し、IGZO薄膜の電子物性と局所構造との関係性を解明し、 PHYSICAL REVIEW APPLIED 9, (2018) 014018に掲載した。
1)Junjun Jia, Ayaka Suko, Yuzo Shigesato, Toshihiro Okajima, Keiko Inoue, Hiroyuki Hosomi, “Evolution of Defect Structures and Deep Subgap States during Annealing of Amorphous In-Ga-Zn Oxide for Thin-Film Transistors”, PHYSICAL REVIEW APPLIED 9, (2018) 014018.
平成29年度の研究発表として、アメリカ材料学会とIUMRS-ICAM 2017(15th International Conference on Advanced Materials)の国際会議で計3件口頭発表した。その中、ホモロガスIn2O3(ZnO)m薄膜の欠陥形成メカニズムに関した発表はIUMRS-ICAM 2017会議でAward for Encouragement of Research賞を受賞した。
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