研究実績の概要 |
本研究では、カルボニル化合物に対して光照射を行うことで生成するカルベンやエノールといった高反応性活性種を利用し、従来にはない新しい合成反応を開拓することを目的に研究を行った。 本年度は主に前年度までに見出したアシルシランとイミン誘導体の光カップリング反応について検討を行った。まず、前年度に見出した最適条件を利用し、反応の基質適用範囲の検討を引き続き行った。その結果、様々なアシルシランとイミン誘導体が本反応に適用可能であり、目的のアミド生成物を与えることがわかった。いくつか目的物の収率の低い基質の組み合わせがあったが、条件検討により収率の改善が見られる基質もあった。また、論文投稿のための、化合物データの取得も並行して行った。さらに、反応中間体の捕捉実験を行った。様々な検討を重ねた結果、電子不足アルケンを添加し、低温で光照射を行うと、中間体が効率よく捕捉されることを見出した。この結果は、本反応の反応機構の解明に役立つ結果であった。本反応は共同研究で理論計算を行なっており、実験結果と合わせて論文を投稿する予定である。 また、前年度より引き続いて、可視光増感エネルギー移動を利用したアルカノイルシランからのシロキシカルベン生成反応についての検討を行った。収率の向上のための細かい反応条件の検討や、化合物データの取得を行い、これらの結果を論文としてまとめて学術雑誌への投稿を行った。本論文は査読を通過し、Chemistry A European Journal (2020, 26, 1249-1253)へ掲載された。
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