本研究では、量子系での非平衡状態である、量子渦乱流状態について研究を行った。 平衡状態と比較して非平衡状態の研究はほとんど進んでいない。そんな中、量子渦乱流は、古典乱流にはない、渦の量子化が起こるため、渦を明確に定義し、乱流を解析するためのアドバンテージがあると言える。そのような違いが、古典乱流と量子乱流で異なる性質を示すのか、共通の性質を示すのか、といったことも含めて、本研究では数値解析を行ってきた。 特に注目したのは、渦乱流へ転移するときの非平衡相転移がどのようなメカニズムで、どのような普遍性を持って実現するか、ということである。本研究では、その非平衡相転移が、森林火災や伝染病のパンデミックのモデルで現れる異方的浸透現象の普遍クラスと同じものであることを突き止めた。量子系である冷却原子の実験系を定量的に再現する基礎方程式から、非平衡相転移の普遍クラスを示した例はこれが初めてである。 また、実験系の研究室との共同研究として、非平衡現象を理解するための、実験系を再現する数値シミュレーションを複数行い、実験の本質的理解に寄与した。
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