研究課題/領域番号 |
16K21346
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
浅川 賢 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (60582749)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 対光反射 / 網膜電図 / 視細胞 / 網膜神経節細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、網膜電図や眼底検査に次ぐ網膜機能評価法として、特定波長光に対する瞳孔反応を応用した非侵襲かつ簡便な評価を試みることである。 非侵襲の点から、皮膚電極型網膜電図のRETeval(LKC Technologies Inc.)を使用し、研究目的に赤・青色光の刺激提示が可能なカスタムプロトコルを企業に依頼・作成した。平均年齢21.4歳の健常若年者50名100眼を対象とし、RETevalにて得られた網膜機能・瞳孔反応のパラメータの再現性と一致性を評価するとともに、基準値を設定することができた。 本結果をもとに、眼科外来に通院中の片眼性の網膜疾患を有する患者にRETevalを測定すると、赤・青色光に対する対光反射が網膜電図の波形振幅のみならず、光干渉断層計による形態変化と一致していた。本症例にて見られた色光刺激による縮瞳の差異は、視細胞と網膜神経節細胞に由来する対光反射の違いを反映していると考えられる。 続いて簡便性に注目し、手持ち式赤外線瞳孔計であるPLR-3000(NeurOptics Inc.)により、平均年齢22.1歳の健常若年者30名30眼に白色光の対光反射を測定し、再現性を確認するとともに、基準値を設定した。再現性は、光刺激後の瞳孔回復を評価するパラメータが低かったものの、概して良好であった。瞳孔回復は交感神経の機能を反映する重要なパラメータであるため、本結果より、瞳孔異常に応じて光刺激の強度や記録時間などの測定条件を変更する必要性を見出すことができた。 しかし得られた基準値では、30歳代以降のデータは不明であること、また臨床評価においても、片眼のみの発症例に対する評価(僚眼との比較)のため、データ数が少ない問題点がある。次年度は、これらの懸案事項を解決するとともに、疾患の検出と鑑別により特異的なパラメータを考案し、赤・青色光の刺激提示が可能なカスタムプロトコルの製品化を企業に依頼していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標であった、特定波長光による網膜機能・瞳孔反応の基準値を得ることができたため。また稀な網膜疾患を有する症例にその評価を行い、臨床応用への可能性を見出すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究にて得られた健常者の基準値は、主に20~30歳の結果であることから、30歳代以降を対象としたデータ収集が必要である。また網膜疾患の病態や瞳孔異常は多種多様であり、現段階では片眼発症の患者に対して評価(僚眼との比較)を行っているため、解析に必要なデータ数が不足している。本研究の最終目標は、非侵襲かつ簡便な網膜機能評価法として、臨床応用へとつなげることであり、これらの懸案事項を解決すべく、今後の研究を推進していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
招待講演と日程が重なったことで、成果発表を行う予定であった学会総会の参加が出来なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
開催地は異なるものの、当初予定の学会総会にて成果発表を行うための旅費として使用する予定である。
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