研究課題
脂肪細胞とNKT細胞との相互作用が肥満の進展にどれほど重要であるかを調べるために、脂肪細胞において特異的にCD1dを欠損させたマウス(脂肪細胞とNKT細胞が相互作用できないマウス)を用いた。脂肪細胞特異的CD1d欠損マウス(KOマウス)に高脂肪食を給餌すると、コントロールマウスに比べて体重増加が少なく、内臓脂肪量も減少することがわかった。さらに、耐糖能異常もコントロールマウスに比べて軽減していた。脂肪組織の炎症性サイトカインの発現増加もKOマウスでは減少し、一方、抗炎症作用をもつアディポネクチンの発現はKOマウスで増加していた。このことから、脂肪細胞とNKT細胞の相互作用によって、脂肪組織炎症が誘導され、肥満・インスリン抵抗性が促進されることが明らかとなった。以上の知見は、in vitro実験で検証された1)NKT細胞はCD1dを介して脂肪細胞によって活性化されること、2)NKT細胞から産生されたIFN-gは脂肪細胞に作用し、TNF-a等の炎症性サイトカインの発現増加、およびアディポネクチンの発現低下を誘導することを、in vivo実験によって実証されたものである。本研究によって、脂肪細胞とNKT細胞と関係性が初めて明らかとなった。NKT細胞がいち早く活性化することで、脂肪組織炎症が惹起され、インスリン抵抗性を来たすと考えられる。今後は、脂肪細胞がどのような脂質抗原を発現しているか、どの抗原がNKT細胞を活性化し得るのかを検証していく。
2: おおむね順調に進展している
in vivoにおいて脂肪細胞とNKT細胞の相互作用の役割を明らかにできたことから、本研究はおおむね順調に進展している。
脂肪細胞が発現するどの脂質抗原がNKT細胞を活性化し得るかを調べるために、3T3-L1脂肪細胞に各種脂質合成阻害剤を作用させ、NKT細胞を共培養したときのNKT細胞の活性化を検証する。また、実際に脂肪細胞から脂質分画を抽出し、それがNKT細胞を活性化し得るかを検討する。そして脂質の網羅的解析によってNKT細胞リガンドの候補を探索する。
当初の実験計画と多少のずれが生じたため。
次年度も引き続き、脂肪細胞が発現するNKT細胞リガンドの探索および、脂肪細胞-NKT細胞相互作用メカニズムの詳細な解析を実施する。
すべて 2016 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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