研究課題
脂肪細胞によるNKT細胞の活性化の際には、何らかの内因性抗原が提示されていると考えている。その抗原探索のツールとして、自身にCD1dが発現しておらず、レスポンダーとして使用できるNKT細胞ハイブリドーマを作製した。まず胸腺腫細胞であるBW1100に発現しているCD1dをCRISPR/Cas9システムを用いて、CD1d欠損株を作製した。NKT細胞は、CD1d欠損マウスとGFPトランスジェニックマウスの両方の骨髄細胞を、CD1d欠損マウスに移植したマウスから回収した。つまり、GFP陰性のNKT細胞がCD1d欠損マウス由来ということを意味している。これらのCD1d欠損BW1100細胞とCD1d欠損NKT細胞を細胞融合し、CD1d欠損NKT細胞ハイブリドーマを作製した。CD1dの発現はフローサイトメーターで確認し、a-ガラクトシルセラミドの反応性は、RBL-CD1d細胞株を抗原提示細胞として使用し、共培養した時のサイトカインを測定して確認した。作製したハイブリドーマの性質を調べるために、表面抗原をフローサイトメーターで、産生サイトカインをELASA法を用いて解析した。作製したハイブリドーマは、CD1d陰性、CD4/CD8陰性、NK1.1陰性、CD44陽性であった。産生サイトカインを測定したところ、CD1d陽性ハイブリドーマに比べて、CD1d欠損株ではIFN-gやIL-17の産生が低かった。このことから、NKT細胞に発現しているCD1dがTh1やTh17サイトカイン産生に関与している可能性が示唆された。今後は、これらのハイブリドーマを用いて、脂肪細胞との共培養によりどのように活性化されるか検討していく。
2: おおむね順調に進展している
脂肪細胞に発現する内因性抗原探索のため、レスポンダーとして使用するCD1d欠損NKT細胞ハイブリドーマが作製できた。この細胞株を用いた脂肪細胞との共培養実験などにより、内因性抗原の候補を検討していく。
CD1d欠損NKT細胞ハイブリドーマと、脂肪細胞との共培養によるハイブリドーマの活性化を評価していく。共培養の際、さまざまな脂質合成阻害を用いたときに、ハイブリドーマの活性化が変化するかを検討する。また、マクロファージ特異的CD1d欠損マウスにおける食餌誘導性肥満の解析も同時に進めていく予定である。
当初の実験計画と多少のずれが生じたため。次年度は、ハイブリドーマを用いたリガンドの探索と、NKTとマクロファージの相互作用が肥満や脂肪組織炎症にどのように作用するかを中心に検討していく予定である。
すべて 2017 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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