研究課題/領域番号 |
16K21348
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
上出 直人 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (20424096)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 運動機能 / 生活機能 / 判定方法 / 高齢者 / 転倒関連自己効力感 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,高齢者の生活機能低下を予測するための運動機能テストの判定方法について検討することである.そこで,本研究では地域で自立した生活を送る65歳以上の高齢者400名を対象に,生活機能,転倒,運動機能,その他の交絡要因に関して,横断調査および縦断調査を実施することを計画した. 研究2年目となる本年度は,昨年度(平成28年度)に実施した横断調査を継続して実施した.さらに,昨年度に横断調査を実施した対象者に対しては,1年後の追跡調査も加えて実施した.本年度の横断調査により,昨年度と合わせて総計519名の高齢者に,生活機能,転倒,運動機能,転倒関連自己効力感,その他の交絡要因について調査を完了した.519名の対象者の属性は,平均年齢71.4±4.6歳,男性135名(26.0%)であった.また,47名(9.1%)に転倒歴があり,120名(23.1%)に骨格筋の筋量低下を認めた.生活機能としては,IADLの低下が33名(6.4%),社会参加能力の低下は118名(22.7%),高次生活機能の低下は297名(57.2%)であった.生活機能と運動機能との関連では,IADLの低下は5回起立テストと最も強く関連を示した.また,社会参加能力の低下は,最大歩行速度と最も強い関連性を示した.高次生活機能の低下については,運動機能との関連は認められなかったが,転倒関連自己効力感,5種類の運動機能テストをスコア化した際の合計点と関連する傾向を認めた.なお,転倒関連自己効力感については,TUGや握力,主観的健康感との関連性や転倒歴の有無に対する識別能力が高いことが示された.従って,転倒関連自己効力感は,運動機能テストの簡易的な代替え手段になりうることが示唆された. 縦断調査では,123名に1年後の追跡調査を実施した.追跡調査を実施した対象者では,一部の生活機能や運動機能に変化が認められた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では,400名の対象者に横断調査を実施し,200名の対象者に縦断調査を実施する予定としていた.本年度に実施した調査により,横断調査を実施した対象者の総数は519名となり,横断調査については,予定対象者数を達成することができた.従って,横断調査については,当初の研究計画どおりに進展していると言える. 縦断調査についても,123名の対象者に対して,1年後の追跡調査を実施することができている.すなわち,縦断調査を実施する予定の対象者数の約半数にまで達している.また,追跡調査は半年毎にも実施しているが,半年後の追跡調査について言えば,178名の対象者に調査を実施しており,順調に追跡調査が遂行できている.縦断調査に関しては,本年度に横断調査を実施した対象者に対して,翌年度(平成30年度)の10月までには調査を実施する予定となっており,調査が終了すれば,当初の計画通りの対象者数まで調査を完了することができると考えている.従って,縦断調査についても,概ね当初の研究計画通りに進展していると言える. 以上のことより,全体として当初の計画通りに順調に進展していると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度については,横断調査を終えた519名分のデータを統計学的に分析し,生活機能と運動機能との関連性に関して,さらに詳細に分析を進める予定である.横断データに対する分析を進めることで,生活機能低下を予測するための,運動機能の判定方法に関するモデルの構築を行っていく.さらに,縦断調査を継続することで,当初の研究計画の目標対象者数までデータの収集を行う予定である.縦断データの収集は,平成30年10月までに実施する予定としており,データ収集終了後は,横断データの分析結果を基に,縦断データの統計学的分析を進める予定である.縦断データの分析を行うことで,横断データの分析結果から得られる運動機能の判定方法について,その妥当性を検証していく.同時に,運動機能テストの代替えとなるような簡易的な評価手法についても,横断データと縦断データの分析を通じて解析していく予定である. 本研究は,研究計画通りに順調に進展しており,研究計画の変更は現時点では必要がないと考えている.ただし,研究遂行上の課題としては,追跡調査における対象者の脱落により,データの分析に必要なサンプルサイズが不足することが挙げられる.しかし,現時点で1年間の追跡調査が完了した対象者数は,目標対象者数の約半数以上まで達している.さらに,追跡期間が半年間と短い期間ではあるが,約8割は追跡調査を継続して実施できている.従って,追跡調査についても,このまま継続していくことで,課題の克服は可能であると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額については,金額は非常に少額であり,予算執行上の差額の範囲内である.従って,計画通りに予算は執行できていると考えている.
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