研究課題
マウス肝虚血再灌流モデルを用いて肝虚血再灌流障害後肝修復におけるPGE2誘導膜型PG合成酵素(mPGES-1)の役割について検討をおこなった。雄性C57BL6マウス(WT)または雄性mPGES-1ノックアウトマウス(mPGES-1-/-)に肝虚血再灌流をおこなうと、mPGES-1-/-において、肝障害が抑制され、肝再生因子発現が増強し、野生型マウスと比較して肝修復が促進した。その制御機構を調べると肝虚血再灌流によって活性化したクッパー細胞におけるmPGES-1は肝修復期において、炎症性マクロファージを肝障害部に集積させ、修復性マクロファージへの転換を抑制した。In vitro実験においてPGE2はmPGES-1陽性骨髄マクロファージを炎症性マクロファージに分化させる傾向にあった。さらに骨髄移植実験において、野生型骨髄キメラマウスに比較してmPGES-1ノックアウト骨髄キメラマウスで肝修復が促進した。これらの結果からmPGES-1は肝虚血再灌流障害後の肝修復を抑制する可能性が示された。さらに肝虚血再灌流障害にいてmPGES-1から合成されたPGE2がどのPGE2受容体サブタイプ(EP1~4)に作用して肝修復に関与するのか、またその制御機構について解析した。再灌流後のPGE2受容体サブタイプではEP4が増強し、EP4アンタゴニスト投与やEP4受容体ノックアウトマウスで肝修復が促進した。この機序としては、マクロファージの表現形式を解析した結果、肝修復のために集積するマクロファージがEP4シグナルに依存して炎症性マクロファージから修復性マクロファージへの転換が抑制されることによるものと推測された。以上の結果から、肝虚血再灌流後mPGES1により産生されたPGE2は、EP4受容体シグナルを介して肝虚血再灌流障害の肝修復に関与することが示唆された。
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J Hepatol
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10.1016/j.jhep.2018.02.009.
Journal of Artificial Organs
巻: 20 ページ: 110~116
10.1007/s10047-016-0941-6