本研究では模擬人体ファントムを用いて非造影MRI灌流画像法(3D ASL法)による脳血流量(CBF)の再現性および定量性評価を行い、3D ASL法の画像診断精度を高めることを目的とした。既製品の灌流ファントムの動静脈を人体に近い構造に改変したファントムに対し、4台のMRI装置(3.0T MRI装置2台、1.5T MRI装置2台)で3D ASL法を撮像した。ファントムではCBF算出に使用する係数が人体と異なるため、係数を除外して灌流画像(PWI)と基準画像(PDWI)の信号比を測定値とした。 各装置において3D ASL法の測定値は実測した流量と強い相関を認めた(r2>0.98)が、灌流低下域を過大評価する傾向となった。また、SPM12を用いて画像の位置補正後に装置間で測定値を比較すると、5~10%程度の誤差を認めた。そのため、3D ASL法はCBFを用いた定量評価には適さず、特に灌流低下病変の定性評価に適することが示唆された。 また、各装置において3D ASL法を5回撮像して変動係数(CV)を算出し、再現性を検証した。同日における再現性は5%以下であり、ヒトを対象とした過去の報告より高い再現性を示した。しかし、脈動数によって再現性に変動があり、どの装置においても同様の傾向が認められた。3D ASL法における信号収集のタイミングは一定であるため、脈動数との同調/非同調によって再現性が変化した可能性が考えられる。しかし、ヒトを対象とした場合、脈拍数は常に一定ではなく、わずかな変動を繰り返すため、臨床で3D ASL法を使用する場合に影響は少ないと考えられる。
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