研究課題/領域番号 |
16K21361
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田畑 祥 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特任助教 (30708342)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 上皮間葉転換 / がん代謝 |
研究実績の概要 |
上皮間葉転換(Epithelial-Mesenchymal Transition: EMT)は、上皮細胞が間葉系細胞に変化する現象で、抗がん剤耐性や転移・浸潤など、がんの悪性化と密接に関与する。近年、EMTによる代謝変化が、間葉系形質の維持に重要であることが報告されており、がん治療の標的として注目されている。しかしながら、これまでの解析ではEMTの代謝機構は部分的な経路しか解析されておらず、その全容は不明な点が多い。本研究では、Transforming Growth factor(TGF)-βによって誘導されるEMTに対して、網羅的な代謝物質レベル(メタボローム)および遺伝子発現(トランスクリプトーム)を併せて解析(多層的オミックス解析)し、EMTの新規代謝機構の探索を行う。 これまでの解析で、以下の結果が得られている。 1.メタボローム解析によって、TGF-β でEMTを誘導した非小細胞肺がん細胞3種 (A549、HCC827およびH358) で19代謝経路が共通して変化していることが明らかになった。 2.トランクリプトーム解析によって上記代謝のKeyとなる8つの候補遺伝子を見出した。そのうち、4つは新規EMT関連代謝遺伝子であった。 3.TGF-β でEMTを誘導した肺がん細胞において、上記の4遺伝子の発現をsiRNAで抑制したところ、 N-cadherin(間葉系マーカー)の発現低下が認められ、EMTの抑制効果が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、肺がん細胞のEMTにおいてメタボロームおよびトランスクリプトーム解析を行い、EMT特異的代謝経路の探索を計画していた。予定通りの解析が終了しており、興味深い結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
1.これまでの解析で見出された代謝遺伝子が、(TGF-β刺激による)EMTの機能(抗がん剤耐性、移動・浸潤能の亢進)と関与するか調べる。 2.本検討で着目する代謝変化と(EMTのマスターレギュレーターである)転写因子Snailの関係性について調べる。SnailをsiRNAによるノックダウンまたは発現ベクターで強制発現させたときに注目する代謝経路が変化するか検討する。 3.公共データベースを利用して、臨床腫瘍サンプルにおけるEMT関連代謝遺伝子の発現解析を行う。公共のマイクロアレイデータベース[Gene Expression Omnibus (GEO)、The Cancer Genome Atlas(TCGA)など]では、実際のヒト腫瘍組織の遺伝子発現データを登録してあるので、今回の解析で見出された代謝関連遺伝子が腫瘍組織で変化しているか、予後との相関があるか調べる。
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