研究課題/領域番号 |
16K21365
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
直井 望 国際基督教大学, 教養学部, 准教授 (20566400)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / アイコンタクト / ライブ・アイトラッキング / 発達 / 縦断的評価 |
研究実績の概要 |
本研究は,実際に大人と子どもがインタラクションするライブ場面での注視反応を計測する,ライブ・アイトラッキング計測法を用いて,ASD児の社会的相互場面における「目のあいにくさ」,つまりアイコンタクトの困難の発達機序を検討することを目的としている。平成28年度は,以下の3点を実施した。 1. ASD児およびASD児のきょうだい児と,統制群となる定型発達児のリクルートを行った。最終的に,ASD幼児18名,生後6-15ヶ月のASD児きょうだい児10名,統制群として定型発達児(生後9-15ヶ月児)21名の参加児を対象に計測を行った。 2. ASD児の日常場面での「目のあいにくさ」をスクリーニングできる課題の選別を行った。 先行研究において,後にASDと診断された子どもの発達初期に,共同注意への応答・表出に障害が見られることが多く報告されている(e.g., Robins et al., 2001)。そのため,①共同注意への応答を評価する課題として,大人が,指さし,頭,視線のみ,のいずれかを2つの玩具のどちらかに向ける課題(共同注意応答課題),②共同注意の自発的表出を評価する課題として,子どもの手の届かない場所でネジ巻きの玩具を動かす課題(玩具課題)と,衝立の後ろから人形が提示される課題(衝立課題)の2課題を実施した。3. 自閉症幼児の注視反応の分析を行った。①共同注意応答課題について,大人の頭・視線の追視は,ASD児において定型発達児と比較して遂行が低いが,指さしへの応答は有意差がないという結果が得られた。②共同注意の表出について,玩具課題においては,ASD幼児と定型発達児で,大人の目領域への注視時間に統計的有意差は見られなかった。一方,衝立課題においては,大人の目領域への注視時間が有意に短いという結果となり,共同注意場面におけるアイコンタクトの困難が定量的に示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の計画では,1. 研究参加児のリクルート,2. 課題の選別に加え,3. ASD幼児における注視反応と他指標との関連を検討する予定であった。現在まで,行動指標としては,①個別式発達検査は,「新版K式発達検査2001」,② 養育者への面接・質問調査として,Vineland適応行動尺度日本語版,言語発達評価として日本語マッカーサー乳幼児言語発達質問紙評価を実施しているが,相関を検討できるほどの人数が計測できていない。 その理由として,研究先の異動のため,乳幼児を計測できる環境を新たに整備する必要があったが,出産のため,異動先での計測環境の設置が遅れ,前所属にて引き続きデータを取得することとなったことが挙げられる。そのため,ASD幼児と定型発達幼児については,各群40名程度の計測を実施する予定であったが,現在までの計測人数については20名程度となっている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き異動先での計測環境の整備を行い,今年度中には現所属でのデータ取得と,大学近隣からの研究参加児の募集を開始することを予定している。また,並行して前所属でもデータ取得も引き続き行う予定である。ASD幼児と統制群としての定型発達幼児については,さらに20名程度のデータを取得し,ASD幼児における注視反応と他指標との関連を検討する予定である。また,ASDの高リスク児群として,ASDきょうだい児の評価を予定している。ASD児のきょうだい児についても継続してリクルートを行い,縦断的に評価を実施する。ASD児のきょうだい児が後にASDと診断される割合はおよそ19 %と報告されている (Ozonoff et a., 2011)。よって,きょうだい児30名以上のデータ収集を目標とする。さらにASDきょうだい児においても,注視反応と他指標との関連の検討をしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属研究機関の変更と,出産のため
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次年度使用額の使用計画 |
現所属機関での計測を開始するため,研究参加者の謝金,及び研究補助(計測補助とデータ解析の補助)のための人件費が必要となる。また,研究の成果を学会発表するための旅費として使用する予定である。
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