研究課題/領域番号 |
16K21365
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
直井 望 国際基督教大学, 教養学部, 准教授 (20566400)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム症 / 共同注意 / ライブ・アイトラッキング |
研究実績の概要 |
平成30年度は,日常場面での「目のあいにくさ」をスクリーニングできる課題として選別した「共同注意応答課題」と「共同注意始発課題」を用いて,以下の5点を実施した。1. ASD児群の言語発達年齢および生活年齢統制群として,生活年齢3-5歳の定型発達児14名のライブ・アイトラッキング計測を行った。2. ASDリスク児としてASD児のきょうだい児を対象に評価を行った。ASD児のきょうだい児26名をリクルートし,生後9ヶ月,12ヶ月時点での縦断評価を行った。生後12ヶ月の時点では,26名中18名のデータ取得が可能であった。また,ASD児のきょうだいを持たない乳児を統制群として,生後9ヶ月から25名の縦断評価を行った。その結果,生後9ヶ月時点で21名,生後12ヶ月の時点で17名においてデータが取得できた。生後12ヶ月のデータは引き続き取得中である。3. 知的障害のないASD幼児を新たに6名計測した。これまで計測してきたデータと合わせて,知的障害が共同注意の発達に及ぼす影響を検討した。結果,知的障害の影響は有意ではなく,ASD児群は言語発達・生活年齢統制群と比較して,大人の顔への視線停留時間が有意に短いという結果となった。4. ASD幼児を対象とした共同注意応答への発達支援の効果を検討した。包括的な発達支援プログラムに参加しているが共同注意の集中的支援を受けていないASD児を統制群として,介入前後の共同注意応答反応を比較した。その結果,統制群と比較して介入群で有意に応答が促進された。また,共同注意始発場面における顔への注視反応も増加した。5. ASD児群において,ライブ場面とモニタに提示された共同注意場面動画への応答を比較した。その結果,モニタ画面の方が有意に応答性が高い傾向にあった。また,4の介入後,モニタ条件での応答性の上昇は見られず,ライブ場面での評価の必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度の計画では,ASDきょうだい児の統制群として,ASDの診断を持つきょうだい児がいない乳児20-30名のデータ収集を目標としており,目標となる人数のデータを取得できた。しかし,3ヶ月後の生後12ヶ月時点での評価で数名が再評価できなかったため,さらに継続的にデータ収集を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
データ収集については継続的に行っているが,目標とするデータ数にほぼ達している。今後,データの解析と統計的分析を終わらせて,成果について論文投稿と学会発表を行い,研究の知見の公表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属の異動により,乳幼児を計測できる環境を新たに整備する必要があった。また,研究代表者の出産と育児のため,現所属での計測環境の設置がさらに遅れた。このため,乳幼児を安全に計測できる環境の整っている前所属の協力のもと,主に前所属先でのデータ収集を行うこととなった。これらの理由から当初の計画が遅延したため,研究期間延長し次年度使用額が生じた。使用計画としては,研究補助(データ解析の補助)のための人件費,論文の校正費,出版に関連する費用,及び研究の成果を学会発表するための旅費として使用する予定である。
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