研究実績の概要 |
本研究は,実際に大人と子どもがインタラクションするライブ場面での注視反応を計測する,ライブ・アイトラッキング計測法を用いて,自閉症スペクトラム障害 (Autism Spectrum Disorder, 以下 ASD とする)と関連した社会的相互場面における「目のあいにくさ」,つまりアイコンタクトの困難の発達機序を検討することを目的としている。平成29年度は,以下の2点を実施した。
1. 昨年度までに計測してきたデータを総合的に分析しまとめた。まず,共同注意の定型発達を検討するため,平均生活月齢9ヶ月,12ヶ月,18ヶ月児, 3-5歳児をライブ・トラッキング法を用いて縦断的および横断的方法で評価した。その結果,共同注意始発場面において他者の顔への視線停留時間が生後9ヶ月以降18ヶ月まで有意に減少しモノへの停留時間が相対的に増加するが,3-5歳で再び他者の顔への停留時間が増加することが示された。さらに,ASD児と定型発達児との比較を行った。ASD幼児(平均生活年齢 4歳3ヶ月)を知的発達症の有無により2群に分けて分析した。その結果,ASD児の共同注意始発において知的水準の効果はなく, 生活年齢統制群と比較すると共同注意場面における他者の顔及び共同注意の対象であるモノへの停留時間が有意に短いことが示された。また共同注意の応答についても知的水準の効果はなく, 生活年齢統制群と比較すると指差し,頭方向への応答性が有意に低いことが示された。 2. ASDきょうだい児の縦断評価: ASDの診断を持つ児のきょうだい児30名,およびASDの診断を持つきょうだい児がいない乳児を生後9ヶ月,12ヶ月時点で評価した。その結果,生後9-10ヶ月の時点で,ASDきょうだい児群において統制群と比較して玩具および顔領域の注視時間が少ない傾向が示された。
以上の成果については学会発表を行い論文を投稿中である。
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