研究課題/領域番号 |
16K21367
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
大西 楠・テア 専修大学, 法学部, 准教授 (70451763)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ドイツ法 / 移民法制 / 難民 |
研究実績の概要 |
本年度は、難民危機後の難民法制の変化を整理したほか、滞在権を与えられた難民の定住化を支援する法制度を検討した。難民危機後、ドイツにおいては政治レベルのみならず、公法学者の間においても、従来の難民受入れの在り方を問い直す問題提起がなされている。これらに接近したのが本年度の研究実績である。 また、本年度は、本来であれば研究の総括を行う年であったため、2018年11月までに得られた知見については、分析・整理を行い、その一部を公表することができた。以下時系列順に列挙する。2018年4月には難民危機後のドイツデモクラシーという観点から宮島喬他編『ヨーロッパ・デモクラシー』(岩波書店)に論文を寄稿した。2018年6月に香港大学で行われた国際公法学会(ICON-S)において、Refugee Acceptance and Social Stateと題する報告を行い、これまでの研究に対するフィードバックを得た。また、2018年7月には東京の入国管理局を見学し、日本の入管行政についての知見を得た。とりわけ、高度人材の活用については、政府の設定した目標数を達成しているところ、その日本の企業における活用事例についてJETROでインタビューを行った。日本の入管行政についての知見は、ドイツ法との比較という視点から整理し、ドイツの外国人法専門誌であるZeitschrift fuer Auslaenderrechtに公表した。2018年12月にはライプチヒの連邦行政裁判所を見学し、第一法廷(移民・難民法を担当)の裁判官にインタビューを行った。これらの日独移民法制の比較を総括するものとして、2019年3月にはドイツ・ハレ大学のWinfrid Kluth教授を専修大学に招聘し、セミナーを開催するとともに意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は本来は最終年度であったが、次の二点において研究の進捗に遅れが生じたので、期間を延長している。 第一に、2018年12月にドイツでは新・移民法(Einwanderungsgesetz)が成立した。この立法は主として技能労働者の入国条件を拡大し、外国人労働者の受入れを促進するものとしても着目されているが、本研究にとって重要なのは、難民認定を拒否されたものの本国への送還が難しい外国人について、就労可能である場合には在留資格を認めるという新しい制度の導入である。日本においても、本来難民条約上の難民でないにもかかわらず、在留・就労目的で難民申請を行うものが多いことに鑑み、ドイツの新制度との比較法的分析が必要である。 第二に、2019年3月にはドイツの外国人法の専門家を招聘してセミナーを行う他、日独移民法制の意見交換を行った。この結果得られた知見を整理・総括する作業が残されている。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、2018年12月にドイツで新たに移民法が成立したので、主として文献研究の手法でこの新立法の分析を行う。とりわけ、難民の就労という点に着目した分析は、これまで国内の先行研究においては手薄であるため、ドイツでの立法過程、各政党の意見表明等を整理・分析する。 第二に、3月末に専修大学に招聘したWinfrid Kluth氏の講演およびその後の意見交換の結果を整理し、日独移民法制の比較という観点からの分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年7月に誕生した子の養育のため、研究時間および調査のためのドイツ出張機会の確保が難しかった(夫の単身赴 任もあり、家族の協力を得るのも難しい状況だった)。加えて、2018年12月にドイツでは新たに技能労働者移民法が成 立し、難民法制についても大きな変更が加えられた。この新法の分析がないままではドイツの難民統合法制の研究とし ては不十分であるところ、新法分析の時間を得るために研究期間の延長申請を行った。
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