研究課題/領域番号 |
16K21371
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
大林 真幸 昭和大学, 薬学部, 講師 (70349041)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 薬剤性肺障害 / OATP4C1 / バイオマーカー / メトトレキサート / 肺胞上皮細胞 / EMT |
研究実績の概要 |
肺胞上皮細胞に特異的に発現する薬物トランスポーターと薬剤性肺障害発症機序に関した報告は乏しい。これまでに我々は、肺末梢部位を構成する肺胞上皮細胞および肺線維芽細胞の役割に焦点を絞り、肺胞上皮細胞に特異的に発現する薬物トランスポーターorganic anion transporter family (OATP) 4C1がMTX誘発間質性肺炎発症機序の原因の1つであることを報告してきた。特に、MTX誘発肺障害においてMTXの輸送を担うOATP4C1と肺胞上皮細胞の上皮間葉転換:EMTが肺障害発症の誘因因子である可能性を明らかにしてきた。そこで、本研究ではこれまでの基礎研究の成果である薬剤性肺障害機序における肺胞上皮細胞に発現するOATP4C1の更なる機能解析を行いつつ、臨床応用に向けた臨床医との共同研究(トランスレーショナルリサーチ)に発展させ、将来、臨床において、OATP4C1が薬剤性肺障害の予後や治療効果、副作用を予測するバイオマーカーとなり得るか否かを明らかにすることを目的とした。平成30年度は、昨年度に引き続き、ヒト肺胞上皮細胞(A549)に発現するOATP4C1をsiRNA法でダウンレギュレーションを行い、MTX刺激時の細胞生存率、細胞形態変化、EMT関連タンパク質発現に対するOATP4C1の関与を検討した。さらに、蛍光免疫多重染色法を用いてOATP4C1の局在と発現量を解析した。その結果、EMT関連タンパクとOATP4C1発現との関連性とOATP4C1が細胞膜のbasolateral側に発現していることが示唆された。以上のことから肺胞間質に存在する血管からMTXが肺胞上皮細胞の基底膜側に存在するOATP4C1から取り込まれ、細胞障害が生じる可能性が考えられた。さらに詳細について検証し、明らかにしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト肺胞上皮細胞(A549)を用いたEMT関連タンパク質の定量解析、細胞障害、蛍光免疫組織化学染色を用いた検討は進めることができたが、MTX誘発肺線維化患者の肺組織サンプルを用いた筋線維芽細胞の局在、コラーゲンの蓄積、アポトーシス、及びOATP4C1の局在と定量解析を行うことができなかった。進まなかった理由として、想定外の研究体制の変化やMTX誘発肺線維化患者の肺組織切片の確保ならびにOATP4C1の蛍光免疫多重染色の実験条件の確立が計画通りに進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、ヒト肺組織における免疫組織化学染色法の確立と解析を目指し、臨床医とのさらなる連携を図り、MTX誘発肺線維症患者の肺組織サンプルを用いた解析を行っていきたい。また、研究体制の改善として、研究協力者(学部6年生2名、5年生2名、4年生1名)の確保ならびに本学の研究推進室や臨床薬理研究所の専門家へ必要に応じて相談を行い、研究が予定通り進行するように指導をいただいて進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒト肺胞上皮細胞(A549)を用いたEMT関連タンパク質の定量解析、細胞障害、蛍光免疫組織化学染色を用いた検討は進めることができたが、MTX誘発肺線維化患者の肺組織サンプルを用いた筋線維芽細胞の局在、コラーゲンの蓄積、アポトーシス、及びOATP4C1の局在と定量解析などを行うことができなかった。そのため、当初の予定していた蛍光免疫染色やqRT-PCRの関連試薬の購入が少なかったため、使用額が使用計画を下回った。 今後は、ヒト肺組織サンプルを用いた解析条件(免疫蛍光染色、qRT-PCRなど)を確立し、MTX誘発肺障害患者の肺組織サンプルを用いたOATP4C1の役割の詳細について検討するため、蛍光免疫染色および遺伝子発現の定量解析を行う為の試薬や実験器具等の物品費に次年度に使用する予定である。
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