本研究は小児領域において遺伝性症候群を背景にもつ個体からのがん化の機序を解明するのを目的とし、多数例を検討できない希少症候群における造血器腫瘍を対象とした。平成30年度は、自施設内の小児MDSで同意の得られた症例の解析を試みたが、GATA2異常を有するMDSを1例認め解析を進めている。血液内科と協力し、さらなる症例集積を諮り、今後の研究進展に努めている。その他、希少なダウン症候群に合併したフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病について解析を行った。ダウン症候群にBCR-ABL融合遺伝子が生じ、IKZF1欠失の付加的異常を同定し、共同研究によるダサチニブの血中濃度モニタリングの有用性を含めた論文化を行い、Pediatric Blood and Cancer誌に発表した。当初の研究計画に含まれていたBloom症候群に合併した骨髄異形成症候群について解析も進め、平成30年度に共同研究者を得たため、現在、複数例での検討を進めている。平成29年度からの継続課題であるPearson症候群に合併した骨髄異形成症候群については、学会発表での議論が終了しており、現在、論文化の準備を進めている。
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