研究課題/領域番号 |
16K21380
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
安原 正貴 帝京大学, 理工学部, 講師 (10738834)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自他交替 / 使役交替 / 修飾要素 / 動作主 |
研究実績の概要 |
動詞は文を構成する上で中心的な役割を果たしており、言語の仕組みを明らかにする上で動詞の研究は重要な意味を持つ。動詞の特性を反映する現象として広く注目されているのが自他交替(自動詞と他動詞の交替現象)である。日本語と英語は、自他交替を示す動詞に関して違いがあることが観察されている。しかし、その違いは当該言語内の特定の動詞の性質によるものであると先行研究では考えられてきた。本研究の目的は、動詞と共起する修飾要素に焦点を当てることにより、日英語間には自他交替に関わる動詞に関して体系的な意味的違いが存在することを明らかにすることである。 日英語間の自他交替に関わる動詞の特性を明らかにするためには、動詞単独を見ていたのでは不十分であり、様々な機能を持つ修飾要素の手助けが必要となる。今年度は、機能に基づいて動詞と共起する修飾要素の分類・調査を行った。例としては、道具の使用を表す道具句、行為の様態を表す様態副詞、手段を表す修飾語句などの修飾要素の機能を統語・意味の観点から考察した。具体的には、こうした修飾要素は動作主の行為を修飾するため、これらの修飾要素が当該の文に生起できる場合、意味的もしくは統語的に動作主がその文に含まれることを主張した。例えば、道具句は動詞が表す出来事に動作主が介在していることを表す機能を持ち、統語的にも動作主の行為を修飾する場所に位置付けられる。こうした動作主の行為を表す修飾要素は、日本語の自動詞とは共起できるが、英語の自動詞とは共起することができないという点で、興味深い言語間の違いが観察される。本年度は、国内外の学会で当該研究に関する研究発表を複数回行い、統語的に日英語の自動詞の構造が異なる可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機能に基づいて動詞と共起する修飾要素を分類・調査するとともに、国際学会などでの研究発表や論文などからデータを収集するというのが当該年度の計画であった。分類・調査については順調に進み、研究の途中経過をその都度、国際学会などで発表することができた。またデータ収集についても、日英語に加えトルコ語などに関するデータも得ることができた。こうして得られたデータは、今後行っていく予定の、自他交替の通言語的な考察につながるものであると言える。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に調査・分類した修飾要素を用いて、日英語の動詞の比較対照を行う。特に、日英語間で自他交替の利用可能性に関して相違がない動詞について、当該の修飾要素との共起可能性に違いが見出されないかを調査する。日本語や英語の事例の収集を行うために、先行研究や文法書などの文献調査を行い、当該の修飾要素と様々な動詞の共起可能性が触れられていないかを調べる。 文献調査で得られなかった事例については、電子コーパスを活用して事例の収集を行う。十分な情報が先行研究やコーパスから提供されない場合は、当該言語の母語話者への聞き取り調査を行う。筆者自身で当該の言語に関する例文を作例し、母語話者に容認性判断をしてもらうことで必要なデータを補う。また、自他交替研究は通言語的に盛んに行われているため、文献調査や国際学会への参加を通して日英語以外の言語を対象とした研究の知見も取り入れ、本研究の通言語的な応用可能性も視野に入れて調査を行う。
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