研究課題/領域番号 |
16K21381
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
石黒 彩 帝京大学, 医学部, 講師 (90709693)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 災害 / ジェンダー / レジリエンス / 地域づくり / メンタルヘルス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、災害に対するコミュニティのレジリエンス(回復力)構築のために、災害におけるリスクのジェンダー格差を把握し、女性のエンパワーメントに注目した地域づくりの方法を明らかにすることである。平成28年度は、(1)災害リスクの男女差について分析(量的研究)、(2)地域づくりに携わる支援者へのインタビュー調査の分析(質的研究) を行った。 (1)宮城県石巻市で被災し、在宅で被災生活を送っていた約8000 世帯を対象に行われた健康・生活に関する調査より、災害リスクに男女差が生まれる要因を量的に分析した。特に震災1-2年後のメンタルヘルスの状況について、心理的苦痛をはかるK6スコアおよび生きる希望の有無にどのような要因が関連しているのか、男女による違いを検討した。男性では、生活に有用な情報を得るための社会的サポートを受けられていないこと、女性では世帯の収入の不安定さが心理的苦痛と関連した。結果はThe 48th Conference of the Asia-Pacific Academic Consortium for Public Healthで発表し、ジェンダーの視点から考察を深め、学術論文として現在投稿中である。 (2)同市で先駆的な地域支援に携わる支援者(専門職等の支援の力を総合的に調整し、同時にインフォーマルな力を引き出す調整役として配備されている地域福祉コーディネーター)を対象にインタビュー調査を実施し、質的研究方法を用いて分析した。インタビューデータを切片化せずに文脈を重視し、プロセス全体の流れを読み取る分析方法である修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを使用し、「地域での活動プロセス」、「活動の理念」、「課題」、などのテーマを分析した。分析過程では、現地の研究協力者との意見交換および情報収集を重ね、災害に対するレジリエンス構築のために地域づくりについて考察している。学術論文としての発表を目指し、結果をまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
災害リスクのジェンダー格差について、まずは震災後のメンタルヘルスの状況について分析を進め、学会発表を通し考察を深めることができた。また地域づくりの具体的な方法についても、質的分析により明らかにしているところであり、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
メンタルヘルスの状況のジェンダー格差の分析結果について、現在投稿中である論文の発表を目指す。また質的分析により明らかにしようとしている地域づくりの具体的方法についても、論文化を目指す。さらに、地域づくりにジェンダーの視点がどう必要であるのか、ジェンダー医学の分野を専門とするオーストラリアMonash大学Jean Hailes Research Unitより協力・助言を得て、研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、主に情報収集や調査結果の分析を行った。物品費を当初の予定より安価に抑えることができたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
量的分析・質的分析をもにさらに分析を深め論文発表を目指すため、物品費および論文投稿・発表に必要な経費がかかると予想される。また、引き続き調査実施場所である宮城県石巻市での情報収集や意見交換、さらに分析・論文作成においてはMonash大学Jean Hailes Research Unitの助言を得る予定で、旅費としても支出する見込みである。
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