本研究課題の目的は、災害に対するコミュニティのレジリエンス(回復力)構築のために、災害におけるリスクのジェンダー格差を把握し、女性のエンパワーメントに注目した地域づくりの方法を、量的・質的アプローチにより明らかにすることであった。具体的には、(1)東日本大震災で被災した宮城県石巻市の被害状況や、在宅の約8000 世帯に行った健康・生活に関する調査より、災害リスクのジェンダー格差が生まれる要因を量的に分析、(2)同市で先駆的な地域支援に携わる地域福祉コーディネーターへのインタビュー調査より、女性のエンパワーメントの観点から災害リスクを軽減する要素を質的に分析することとし、そしてこれらの結果をもとに災害に強い地域をつくるための具体策を提案することを最終的な目的としていた。 最終年度にあたる2019年度は、主に(2)を行った。宮城県石巻市で先駆的な地域づくりに携わる支援者(地域福祉コーディネーター)を対象に実施したインタビュー結果をもとに、質的分析により明らかにした地域への介入プロセスを学術論文としてまとめた。コーディネーターらによる「住民との関係構築」「地域のアセスメント」「地域への働きかけ」の3段階のプロセス中で、住民を主体としつつも他の支援者との連携することにより、地域課題の解決をはかっていることが明らかになり、このような地域介入により社会関係資本の強化が期待され、公衆衛生の向上に役立つ可能性が示唆された。論文は原著論文として日本公衆衛生学雑誌に採択され、現在出版準備中である。
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